週刊誌や雑誌など紙媒体の低迷が叫ばれて久しいが、1年半以上続くコロナ禍で雑誌業界は窮地に立たされている。日本では2020年の間だけで、100誌以上の雑誌などが休刊に追い込まれ、アメリカでも広告収入の激減や若い読者の雑誌離れのため、様々な場所でスタッフの削減などが行われている。
しかしこのような状況下で着実に読者数を増やし、収益の増加に成功している雑誌が、数は少ないが存在する。その一つが、いち早くデジタル版の有料化に踏み切った高級誌ニューヨーカーである。ニューヨーク在住の著者が同誌の取り組みを取材した。【メディアDX研究2】はこちら
「我々の今年の収益は昨年と比べ、2桁台の成長を見込んでいます」
こう豪語するのはニューヨークを拠点とし、世界的に有名なファッション誌「ヴォーグ」や「GQ」などを含む20誌以上を手掛ける、米大手出版社「コンデナスト」のロジャー・リンチ最高経営責任者(CEO)である。
米メディアと行ったインタビュー(今年3月)で、リンチ氏はコロナ禍の影響で昨年の広告収入は縮小したとしながらも、同社が出版する雑誌の有料サブスク数(サブスクリプション=購読者数)は今年に入り全般的に増加していると語っている。
コンデナスト社の主要雑誌の一つ、ニューヨーカー誌は80%近くを紙面購読やデジタル・サブスクなどの販売収入に頼っている。つまり、読者からの収入が広告収入を上回るアメリカでも数少ない雑誌なのだ。
コンデナスト社は自社の雑誌のデジタル版を2019年にすべて有料化したが、それに先駆けて2014年にニューヨーカー誌のデジタル版にペイウォール(課金制)を導入した。
現在の購読料金は、デジタル・サブスクだけの場合、1年間で99.99ドル(約11000円)。紙の雑誌を購読すると、デジタル版にも無制限にアクセスすることが出来て、1年間で149.99ドル(約17000円)となっており、紙の購読者がデジタルに移行しやすい仕組みになっている(初年度は料金割引が適応され、購読していなくても、月4本までならデジタル記事が無料で読むことができる)。