ただ、「週末の上映分チケットを買ってみようと思ったら、興味を持った作品はどれも売り切れでした。もう少し早く知っておけば良かった」と残念がってもいた。
この女性が話すように、せっかく映画祭の上映作品を見たくても見られなかったという人は多かったかもしれない。平日の日中は上映直前でもチケットが残っていたが、平日夜や週末はやはり売り切れになっている上映が目立った。それも、好評でチケットが売り切れたというよりは、そもそも販売チケット数や上映回数が十分ではなかったことが原因のように感じる。
今回の上映映画館は、TOHOシネマズシャンテ、有楽町よみうりホール、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ有楽町とあり、昨年までのTOHOシネマズ六本木ヒルズよりも数が増えた。ただ、いずれもスクリーン数が限られているので、席数は六本木よりも減ってしまった。改革の一環として昨年から同時期開催になった、アジアの作品を中心にした国際映画祭「第22回東京フィルメックス」が、同じ有楽町の映画館を使用していることも影響したと思われる。せっかく認知度が高まっても映画鑑賞というタッチポイントが減ってしまっては、映画祭のファン作りという点でも、もったいない。
安藤チェアマンも「今回の映画祭で使わなかった映画館がまだいくつかある。増やしていくのは今後の課題」と話す。
屋外上映会を行った日比谷ミッドタウンでは、6階屋外スペースで橋本愛、是枝裕和監督、西島秀俊らや、ポン・ジュノ監督など世界的監督たちが参加するトークショーが連日開かれていた。しかし、その下の4階にあるこのエリア最大の映画館・TOHOシネマズ日比谷では、国際映画祭の作品の一般上映が全く無かったのは残念な感じがした。
上映している映画館にしても、入り口にいっても特別な装飾などはなく、ただ上映しているだけ。海外の大規模国際映画祭では、開催映画館自体が建物内外で映画祭に参加していることをアピールしているので、一目でわかることが多い。鑑賞に訪れた人たちが映画祭に参加していると思えるような雰囲気作りがあっても良かったかもしれない。これも来年以降の課題の一つだろう。