「資産運用といっても、増やせる絶対の自信は誰も持つことができません。一方、『控除』の利用はリスクゼロでできます。よっぽど合理的だと思ったんです」(同)
長尾さんのように公的な制度を使って長期間かけてお金を増やすやり方は、実は会社員でもマネすることができる。小規模企業共済や国民年金基金は使えないが、超高齢化による財政難などで近年、国が国民に「自助努力」を求める動きが強まり、資産形成をしやすくする仕組みが整備されているからだ。
その代表格が、2017年に制度が大幅に拡充された「個人型確定拠出年金(iDeCo)」と、18年に制度が新たにつくられた「つみたてNISA」だ。
iDeCoは公的年金への上乗せ分を作るための制度として、つみたてNISAは金融初心者でも安心して資産形成に取り組めることをめざしてつくられた。ともに毎月お金をコツコツ積み立てていく長期投資で、投資信託を使えば個人でもリスクを分散させた投資ができる。つまり、この二つなら、金融庁もお墨付きを与えている投資の王道、「長期・分散・積み立て」投資が簡単に実践できるのだ。
19年の「老後資金2千万円問題」以来、積み立て投資は将来に不安を持つ若者を中心に注目を集め、特につみたてNISAは加入者が急増している。このため二つとも20代、30代の資産形成手段として紹介されることが多いが、『はじめてのNISA&iDeCo』の著者で積み立て投資に詳しいファイナンシャルプランナーの頼藤太希氏は、年齢はあまり関係がないと言う。
「つみたてNISAはそもそも年齢上限がありません。iDeCoは現在60歳までの加入ですが、来年5月からは65歳まで加入できるように延長されます。50代はもちろん60歳から始めても遅くありません」
なるほど、それなら二つの制度を利用して「じぶん年金」づくりができそうだ。どんな利用法が考えられ、50歳や60歳から始めた場合、どれくらいのお金がたまることが期待できるのか。