「毎日、英語と日本語を使って質問に答えていた。言葉の壁はあったが1年目から英語で話そうとしたのを覚えている。困った際にはイサオ(=ヤンキース広報・広岡勲氏)にサポートしてもらって納得できる答えをくれた。ヤンキース時代を知る限りその姿は不変だった。デレク・ジーターだって調子が悪かったりしたらノーコメントの時もあった。松井は大変だったと思う」(米国メディア元ヤンキース担当記者)

『グッドガイ賞』を受賞した03年、松井以外の候補者にはアーロン・ブーン(ヤンキース)と、トム・グラビン(メッツ)の名前が挙がっていた。ブーンは親子三代メジャーリーガーとして知られる現ヤンキース監督。グラビンは通算305勝左腕で14年に野球殿堂入りを果たした。現役引退後もいまだ讃えられる2人を抑えての受賞だったことも快挙だ。

 また、松井とメディアの関係は取材の時だけにとどまらなかった。

「選手とメディアがプライベートで食事に行ったりするのは考えられない。ビジネスなどが絡まない親善草野球をするなど聞いたこともない。お互いにプロなので距離が近くなり過ぎることが逆効果になることも多い。米国では見たことない光景に賛否両論も聞かれた。問題が起きなかったのは松井だったからかもしれない」(在米スポーツライター)

 キャンプ中に日米メディアを夕食に招待し全員の名前を覚えようとしたことは衝撃すら与えた。余程の場面を除き、欧米では選手とメディアの関係には緊張感があり良好でない場合もある。また故障を引き起こす可能性がある行為は契約で禁止されている。オフの期間に番記者などと草野球を楽しむなどは考えられない行動だ。

「イチロー(元マリナーズ他)は日本メディアの取材はほとんど受け付けなかった。米国メディアとの関係も良かったとは言えない。しかし結果を出し続けることでメジャーリーガーとして尊敬されていた。これが本来の形で松井のスタンスの方が異色に思えた。それでも謙虚に献身性を持ってプレーしてメディアやファンと真摯に接したことで人間性の虜になった人は多い。プロとしては両方とも正解と言えるのではないか」(米国メディア元ヤンキース担当記者)

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大谷や日本ハムの新指揮官とも共通点?