取材では真面目に一つ一つの質問に対応するため、面白おかしい話が聞けることは少なかった。しかし大口を叩かない謙虚な受け答えからは誠実さが伝わってきた。そしてグラウンド上では誰もが真似できないような活躍を見せる。まさにスーパースターでありロールモデルのような男。09年のワールドシリーズMVPは一生、忘れられることのない大偉業だった。

 現在ではSNSを通じて自身の思いを発信するアスリートが増えた。従来型のメディアとの関係性を築くのが難しくなっている。今後、松井のようにメディアを媒介にして大衆に情報を伝えるアスリートは出にくくなることが予想される。そんな時代において大谷や日本ハムの新指揮官に就任した新庄剛志監督に注目が集まるのは、松井との共通点を感じてしまうからではないだろうか。

 松井は過去に、マスコミと良い関係を築けないようでは選手としてダメだと述べているように、常にメディアに対して真摯に対応してきた。今はテレビなどのメディアに出る機会も減ったが、次に公の場に現れた時に野球界の“紳士”は何を語ってくれるのだろうか。