――比例区での敗因の背景には、一桁から伸びることがなかった政党支持率が指摘されます。「頼りにならない野党」のイメージ、枝野代表の「トップダウン」体質、旧民主党時代以来「新陳代謝」がなかったことへの市民の不満も指摘された。その意味で、枝野さんの交代は、大きな転換点ともいえます。
例えば、静岡3区で当選した立憲・小山展弘議員(45)の詳しい選挙戦リポートが参考になります。前回は落選し、今回返り咲いた男です。民間労組ときっちり話をして、応援してもらうと同時に、共産党支持者もいる市民団体とつきあう。その一方で、連合には気を使って赤旗に載るようなことは避ける。農林中金(農林中央金庫)の出身だからJAからも推薦を得る。それだけまめにあちこち動き回って、信頼関係を作った。千葉8区の本庄知史議員(47)や宮崎1区の渡辺創議員(44)も、地元にしっかり根を張っている。こうした取り組みをみんなで共有して、組合頼り、風頼みの体質を転換していってほしいですね。
4年前の立憲民主党は、枝野さん一人で作ったベンチャービジネスみたいなものでした。それが、国会議員百数十人の大企業に発展しましたが、ガバナンスの仕組みはできていなかった。代表には、ぜひ若い人になっていただきたいですが、これを支える幹事長には経験ある人がいいですね。例えば、元代表の岡田克也さん(68)のような幅広い人間関係がある人に座っていただけると、頼もしいですね。
■自公に対抗する経済政策が必要だ
――共産党ももっと変わってもいいんじゃないでしょうか。志位和夫さん(67)は委員長になって21年。枝野さんが交代したのを機に、政策委員長の田村智子さん(56)や若手の山添拓さん(36)が新委員長や幹部に抜擢されると、共産党のイメージはずいぶん変わると思います。来年は党創設100年の節目でもありますし。
野党共闘はもともと志位さんが言い出したことです。この間ずっとぶれずに、共闘路線を進んできてくれた。共闘を実質的に支えてくれました。
――ニューヨーク・タイムズは、日本共産党を「ベージュのカーディガンくらいのradicalさ」と表現しました。外国からみれば、国内で喧伝されるほど急進的でないようです。欧州の社会民主党に似ている、とも聞きます。政治学者にはどう見えますか。
資本主義の枠組みの中で、より良い政策を目指しますといってくれればそれでいいわけですよ。でも、そう言うと、従来の支持者たちのエネルギーが低下しちゃうかな。例えば、アメリカ民主党のリベラル派、サンダースに似ています。ヨーロッパで言うと、北欧の社会民主党の路線と同じ、みたいな。そういう打ち出しも必要ですよね。
――新生「立憲民主党」は、支持層をもう少し広げたいですね。
リベラルとは言えない有権者の票も集めるための「穏健・中庸イメージ」も必要でしょう。支持者に安定感、安心感をもってもらうためには、自公に対抗する経済政策を練る必要があります。
「安倍・菅政治の9年」は、円安で輸出企業が少しもうかっただけで、技術は衰弱するし、政府にぶら下がって利権をむさぼる中抜きビジネス、随意契約みたいなものがはびこっていた。そこをきっちり批判したうえで、エネルギーを中心としたイノベーションをしっかり起こして、ともかく日本人が食っていけるだけの産業を創り出す、というメッセージが必要です。
「新しい資本主義」も争点にしたい。自民党のほうは中身がない、途上国型の古くさい「クローニー(縁故)資本主義」です。本来の公平な市場を作って、大学で自由な研究を進めて、そこから次の新しいイノベーションを起こすべきだと考えます。
(構成/ジャーナリスト・菅沼栄一郎)
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