浅田:仕事に戻ったときは「赤い風船」の話をされるのがすごくイヤで。取材でも「『赤い風船』の話はしないでほしい」って言ってました。でも、何かきっかけがあったわけじゃないけど、「赤い風船」の時代があったから、私は今こうしていられるんだと思ったら、「『赤い風船』? 歌いますよ」みたいになっちゃいました。打ち上げのときとかカラオケで。

林:「紅白」に出ましたっけ。

浅田:出てないの。当時、NHKの歌番組に出るにはオーディションに受からなきゃいけなくて、私は毎回落ちちゃって、5回目ぐらいかな、やっと受かったの(笑)。

林:そうだったの。女優をやっていけるなと思ったのはいつですか。

浅田:いや、まだダメですよ。希林さんにほめられるようなお芝居は、まだできてないと思ってる。

林:私、「朝が来る」(20年、河瀬直美監督)はまだ見てないんですけど、「泣いちゃった」と言う人、多いですよね。

浅田:あれで賞(日本映画批評家大賞助演女優賞)をもらって、希林さんの着物を借りて、希林さんのお墓に行って報告したんだけど、あれはうれしかったです。

林:ゴメンね。必ず見るからね。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

浅田美代子(あさだ・みよこ)/1956年、東京都生まれ。73年、ドラマ「時間ですよ」でデビュー。劇中歌「赤い風船」が大ヒットし、同年の日本レコード大賞新人賞を受賞。「寺内貫太郎一家」「時間ですよ・昭和元年」「釣りバカ日誌」などのドラマ・映画など出演多数。2019年、映画「エリカ38」に主演、21年には映画「朝が来る」で第30回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞。動物愛護団体への支援をライフワークとしている。俳優・樹木希林さんとの思い出をつづったエッセー集『ひとりじめ』(文藝春秋)が発売中。

週刊朝日  2021年11月26日号より抜粋