「例えば介護施設で、夜に入居者が起きたタイミングで声をかけ、おむつ交換ができます。眠っている方をわざわざ起こして確認することがなくなれば、介助の質も上がりますし、スタッフの負担も減ります」(伊藤さん)
09年の発売以降、3900施設以上が採用し、販売台数は3月末時点で累計8万2千台以上に上るという。法人向けは1セットあたり税込み約8万~10万円。別途、個人向けの商品もある。価格は同5万5千円で、東京・京橋のショールームやネットを通じて買える。
同社はほかにも、硬さを自動的に調節することで体位を変えたり、姿勢を維持したりできる床ずれ防止マットレスを昨年、発売した。広報部次長の鈴木了平さんは言う。
「マットレス内に設置した圧力を感知するセンサーが、クッションの沈み具合を計測し、利用者の寝位置や背中の曲がり具合を検知する業界初の技術を採用しています」
介護分野の人手不足は深刻だ。介護が必要な人が増える一方、負担が大きい割に給料が少なく、人が集まりにくい。厚生労働省の推計では、19年度の介護職員数をベースとした場合、25年度に全国で32万人が不足する。センサーをはじめ、人工知能(AI)やITを使った効率化は急務だ。
約160人が入居する特別養護老人ホーム「フロース東糀谷」などを運営する社会福祉法人善光会(東京都大田区)は、先端機器の導入に積極的だ。先述のディー・フリーや眠りSCANのほか、近赤外線カメラとドップラーセンサーを使って入居者の状況を把握できるシステムなどを活用。AIの第一人者、東京大の松尾豊研究室と組み、AIで入居者の行動を分析し、車いすからの落下などを予知する仕組みの開発にも取り組む。
同会のシンクタンク「サンタフェ総合研究所」研究員でフロース東糀谷の副施設長の谷口尚洋さんは、導入に熱心な理由をこう話す。
「経験に頼ることが多かった介護の現場をもっと定量的に把握・管理できるようになれば、今まで以上に科学的根拠にもとづいてサービスの質の向上に取り組めるようになります。現場で改善できることは少なくない」
さらなる技術の進歩に期待したい。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2021年11月26日号