同会の目的は、小谷さんの願いでもある。
「夫を亡くした時、『かわいそうに』と声をかけられました。夫は突然死で、私よりも死んだ本人がかわいそうなのに!と腹立たしく思ってしまったんです」(同)
また、「死別して間がないのだから、楽しそうにしないほうがいい。後ろ指をさされるから」と言われたこともある。
「市川海老蔵さんが、妻の麻央さんが亡くなった直後にディズニーランドに行って、『不謹慎だ』とネットで炎上したことがありましたが、何が悪かったのでしょうか。配偶者を亡くしたら、一生喪に服さなきゃいけないような社会の圧力みたいなものはあります。残された人も生きていかなくてはならないのに、生きている人のことはないがしろにされがちだと感じました」(同)
◆配偶者頼りは苦労することに
残された人は、配偶者の死という受け入れ難い事実を背負うだけでなく、日常生活でも困難に直面することが多い。家事を妻に任せきりだった男性は、妻亡き後、身の回りのことができずに困り、女性は経済的に不安定になることがある。
「特に男性は根拠なく『自分が先に死ぬ』と思っている人が多く、妻に先立たれて何もできないことがよくあります。男女ともに一人で生きていけるだけの生活力や経済力を身に付けておくことは本当に大事です」(同)
「没イチ会」メンバーの一人である岡庭正行さん(66)は、59歳の時に妻を突然死で失った。
「妻が亡くなる前日の夜、二人で東北旅行を計画して、『ホテル取れたよ』と話したのが最後。妻は朝、台所で倒れていました。私は単身赴任が多く、身の回りのことはできたのですが、家にいる時間が短くて妻に任せていた分、家の中のどこに何があるか全くわからず、お金の管理にも無頓着で、今は無駄な出費が多いかもしれません」(岡庭さん)
妻を亡くした1カ月後に会社から中国赴任を打診され、悲しむ間もなかったという。
「赴任後は月に1回帰国していたのですが、飛行機の待ち時間などで少しずつ妻のことを思い返すようになりました。旅行が好きで、コンサートや美術館によく行きました。妻はいつも楽しそうにしていました」(同)