同時に、自身の両親のようにパートナーが健在で年を重ねられることの貴重さも実感するようになったという。

「長年一緒にいると惰性になりがちですが、パートナーがいることのよさを改めて実感し、相手の新たな一面を知ろうとしたり、喜んでもらおうとしたりすることが大事ではないかと考えるようになりました」(同)

 マンガ「没イチ」の主人公は45歳、小谷さんは42歳と、若くして配偶者と死別したが、その衝撃は何歳であってもこたえるものだ。そして、死別経験者は身近に体験を話せる人がおらず、心を閉ざしてしまう人も少なくないという。

 インターネット上の交流サイト「パレット倶楽部」は、そうした死別経験者の心のよりどころとなっている。運営するのは、かつて結婚相談所を営んでいた林文勇さん(66)。バツイチ仲間の交流会を開いていたところ、参加者から「離婚と死別は違うので、死別だけの交流会をしてほしい」という声が上がり、2009年に倶楽部内に死別経験者のみの交流会「天国組会」を作った。

 当初は参加者が集まっての会だったが、コロナの影響で、現在はオンラインのみの開催となっている。

「死別というと80代以上の高齢者ばかりが集まるのかと思ったのですが、やってみると30~40代の若い人も集まって驚きました」(林さん)

 現在、メールマガジンの登録者数は約3千人。30~60代が中心で、女性が多いという。「天国組会」は、入会金や月会費などはなく、発生するのは参加費のみ(オンライン会は1500円)。

「死別を経験すると、『自分の人生は終わった』と感じる人が多いようです。経験者同士で話すだけに心が軽くなり、少しずつ元気になって、前を向いてもらえるようになったらいいと思っています。友達ができる人もいますし、中には交際に発展する人もいますが、それはご縁なので、自然に任せています」(同)

 林さん自身、運営にあたってグリーフケア(遺族に寄り添い、サポートすること)や傾聴(相手の話に耳を傾けて共感する手法)などについて学び、交流を裏から支えている。林さんにとって「パレット倶楽部」はライフワークのようなもので、利益は出ていないという。

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