藤井聡太が竜王戦七番勝負で4連勝を飾り、史上最年少の19歳で四冠を達成した。名人と並ぶビッグタイトルの竜王獲得で将棋界の席次も1位に。「藤井時代」がついに到来した。渡辺明王将への挑戦も決まり、次は史上最年少五冠を目指すことになる。
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あえて、われらが藤井聡太、と書こう。
若き国民的スーパースター藤井は今年度、竜王戦の挑戦者となった。そして秋に開幕した七番勝負で、王者・豊島将之(31)を相手に4連勝ストレートで竜王位を奪取。史上最年少の19歳でタイトル四冠同時保持者となり、将棋界の席次は1位に。われらが藤井聡太は、名実ともに将棋界の頂点に立った。
「将棋史に残る戦いにふさわしい名局でした」
渡辺明名人(37)は、藤井新竜王が誕生した第4局(11月12、13日)をそうたたえた。藤井の節目の勝局が毎度のように「名局」と言われるのは盛り過ぎでもなんでもない。現実にそうなのだから、仕方がない。
■「藤井曲線」とはならず
本局、先手番の豊島は得意の角換わりを選んだ。しかし序盤からポイントを積み重ね、中盤で優位に立ったのは藤井だった。
「先手番で作戦があまりうまくいかなかった」
短手数で敗れた第2局と合わせて、豊島はそう振り返った。
通算勝率8割4分を超える藤井は多くの場合、形勢を少しずつ広げてそのまま勝つ。コンピューター将棋ソフト(AI)が示す評価値をグラフにすれば、俗に「藤井曲線」と呼ばれる右肩上がりの図が示される。しかし本局はそうならなかった。豊島はギリギリのところで踏みとどまって巻き返す。
104手目、藤井は自陣の危険を承知の上で、相手陣に飛車を成り込み、豊島玉に迫った。もはやどちらが勝ちかはわからない。持ち時間8時間のうち、残りは藤井9分なのに対して、豊島は2時間29分。これは豊島の勝ちパターンだ。今年度に入って藤井が勝ち越すようになったとはいえ、最初は豊島が藤井を圧倒していた。豊島がそれまでの棋士人生で、タイトル戦でストレート負けを喫したこともない。本局は豊島が勝ち筋を見つけ、逆転でカド番をしのぐのかとも思われた。