同年の広島はエルドレッド、キラ、フィリップス、ミコライオがいたため、“5人目の男”はなかなか出番に恵まれなかった。

 だが、死球で背中を痛めたキラに代わって4月23日に1軍初昇格をはたすと、ロサリオは5月1日の阪神戦で3回に先制ソロを放つなど、4打数4安打の大当たり。ルーキー・大瀬良大地の勝利をアシストした。

 ところが、試合後に待っていたのは、非情の2軍落ち通告だった。キラの1軍復帰が決まったからだ。

「自分にはどうでもできない部分だし、自分のできることを出し切るだけ」と出直しを誓ったロサリオは5月24日に1軍再昇格。6月1日の楽天戦で左中間席中段に5号2ランを放ち、勝利に貢献した。

 しかし、今度は第2子誕生のため一時帰国していたミコライオの復帰と入れ替わりに、またしても2軍落ち……。度重なる皮肉なめぐりあわせに、野村謙二郎監督も、ミコライオの1ヵ月の不在で中継ぎ陣が疲弊していることを理由に挙げ、「難しいところ。私の気持ちを察してください」と苦渋の表情だった。

 そんな逆境にもめげず、ロサリオは9月2日の巨人戦で、助っ人史上8人目(10度目)のサイクル安打を達成し、球史に名を残した。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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