松坂大輔選手の最後の登板。最速は118キロだった。「最後の最後は全部さらけ出して見てもらおうと思いました」と会見で語った
松坂大輔選手の最後の登板。最速は118キロだった。「最後の最後は全部さらけ出して見てもらおうと思いました」と会見で語った
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 野球ファン以外にも鮮烈な記憶を残してきた西武・松坂大輔選手(41)が現役を引退した。同学年の「松坂世代」の人たちも人生の転換期を迎える。引退にそれぞれの思いを重ねた。AERA 2021年11月29日号から。

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 Z世代、ゆとり世代、ロスジェネ、団塊の世代──。世代を指す言葉は様々あれど「松坂世代」はかなり特殊な言葉だ。1980年4月2日~81年4月1日生まれの1学年のみを指し、何より「松坂大輔」という一個人の名前が冠に付いている。狭義では当たり年とも言われた同学年の野球選手たちを指すが、広く一般の同学年の人たちを示す言葉としても使われてきた。

 今年度で41歳。公私に転換期を迎える時期でもある。球界外の松坂世代は、西武・松坂選手の現役引退をどう見たのか。同世代の記者が話を聞いた。

 10月19日の引退試合を見て感動した、と話したのは群馬県で内装会社を営む中島隆男さん。

「投球を見て、こんなにボロボロだったんだと感じました。見せたくなかっただろうけど、そういう姿までさらけ出してくれたこともうれしい。ようやく重圧から解放されるのでは」

 中島さんは会社を経営する立場として周囲に弱いところを見せないようにしている。だからこそ、グッときたのだという。

嫉妬から応援に変化

 自身も小学生の頃に野球をやっていた。桑田真澄・現巨人コーチ(53)や原辰徳・現巨人監督(63)がいた巨人の試合は全国中継されていた。テレビの存在感は今より格段に大きかった。

 野球に興味がなかった記者も、カルビーの「プロ野球チップス」の(巨人で活躍した強打者)ウォーレン・クロマティ(68)のカードは大事に持っていた記憶がある。野球はみんなの共通言語だった。

 そんな環境で迎えた高3の夏。

「みんなが岐路に立っていたあの夏にめちゃめちゃ頑張っていた同世代がいる。松坂の活躍はずっと私の発奮剤でした。ここ数年はたたかれることも多かったけど、批判を聞くたびに心の中では擁護していました」

 そう話す東京都内の女性は3人目の子どもの育休中だ。独身の頃はがむしゃらな働き方をしたこともある。だが、もはやそんな働き方はできない。優秀な後輩と「張り合わなきゃ」という気持ちは最近なくなった。

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