年金の世界では86年より前の法律を「旧法」、後を「新法」と呼んでいる。厚生年金は旧法では「定額部分+所得比例部分」だったのが、新法では「老齢基礎年金+報酬比例部分」に変わったわけだ。

 しかし、この定額部分と老齢基礎年金、計算方式の違いなどで、少額だが微妙に定額部分のほうが高くなってしまうのである。となると、厄介な事態が生じる。

 新法で支給開始は65歳からに変わったが、激変緩和措置で60歳代前半は「特別支給」という形で、これまでと同様、60歳から定額部分を含む厚生年金が支給されていた(現在、「特別支給」は廃止途上)。すると、65歳になって定額部分が老齢基礎年金に切り替わったときに年金額が下がってしまう。

 そこで、その減額分を補填するために考え出されたのが「経過的加算」である。要するに、その差額を補填するのだ。

 老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間の加入で、一方、厚生年金の定額部分は会社に勤めた全期間だ。従って、「経過的加算」の対象期間は二つの重なる部分、「20歳から60歳までで会社に勤めていた期間」になる。そして老齢基礎年金の加入期間40年に合わせて、「経過的加算」の計算では定額部分は「480カ月(40年)分」が上限になっている。

 しかし、これだと、もともと二つの差は少額だから「経過的加算」は大きな金額にはならない。ところが、ここに「空白」ともとれる期間が存在する。「20歳前」と「60歳以降」の期間である。この期間に定額部分が480カ月に届いていない人が会社で働くと、定額部分のみがどんどん膨らんでいくのだ。それは、「経過的加算」が増えていくことにほかならない。

(週刊朝日2021年12月3日号より)
(週刊朝日2021年12月3日号より)

 これが、記者のように60歳代で会社で働いている人に起きている現象だ。今受給を開始する人たちには60歳代前半の定額部分は支給されていないが、65歳のときに改めて計算されて「経過的加算」が支給され続けている。

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