川端の代表作「古都」の連載が朝日新聞で開始されたのは、1961年秋。京都の呉服店の一人娘の物語が、名所や伝統行事を背景に美しくも切なく描かれている。60年経った今も色あせることなく、この小説は最高の京都ガイドであり続ける。
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川端康成「古都」でめぐる京都の名所一覧(小説登場順)
■平安神宮
左京区岡崎西天王町97
平安遷都1100年を記念し、1895年に桓武天皇を祭神として創建された。社殿を取り囲むように総面積約1万坪の庭があり、四季を楽しめる
■清水寺
東山区清水1−294
音羽山の中腹にある。御本尊は十一面千手観世音菩薩。本堂は断崖に建っており、懸造りと呼ばれる工法による木材が高さ13mの舞台を支える
■野宮神社
右京区嵯峨野宮町1
野宮とは伊勢神宮に仕える斎王が身を清める場所。毎回異なる場所に作られていたが、嵯峨天皇の仁子内親王のときから当地に作られ始めた
■仁和寺
右京区御室大内33
888年創建。二王門から入り、五重塔脇を通って国宝の金堂に向かう。桜の名所で、「古都」で主人公一家は御室桜と呼ばれる遅咲き桜を見物
■京都府立植物園
左京区下鴨半木町
約24haの敷地に約1万2000種の植物が生育。この時期は紅葉ライトアップが。「古都」では、静かなところでくつろぎたいと主人公一家が訪れる
■神護寺
右京区梅ケ畑高雄町5
平安京造営の推進者・和気清麻呂が建立した神願寺と高雄山寺が合併し、空海に付嘱された寺。高雄山の中腹、長い登り道の先にある。「古都」の主人公・千重子は、ここに収められている平重盛の肖像画が気になっていた
■西明寺
右京区梅ケ畑槇尾町1
空海の高弟・智泉大徳が、戒律道場として開いた。美しい朱色の指月橋を渡って参道に。樹齢700年の高野槙を数百本のモミジが取り囲んでいる。境内には数百本のモミジが植えられている。千重子のように、近くにある神護寺、高山寺と合わせた「三尾」を回ってみたい