ただし、せっかくFIREを達成したのだから、ストレスを感じるような人付き合いには関わらないようにしている。

「100人いれば100通りのFIREがあり、いずれも正解。大切なのは『FI』によって会社から『RE』し、選択肢のある人生を送ることでは」

 東京在住のアラフィフ男性は、いったんFIREしたが再び会社員に戻ったという異色の経歴。90年代半ばに京都大学を卒業後、外資系金融機関のトレーダーとして、巨額の取引を繰り返す日々を送っていた。

 その重圧から就業中に過呼吸を頻発するようになってしまった。ついには夜中に咳が止まらなくなり、吐血して救急車で搬送された。

30代後半に資産2億円で外資系企業を退職したものの、しばらくのんびりしたら「飽きてしまい再就職した」都内在住のアラフィフ男性。趣味の高級時計をつけて週3で出勤(残り2日はテレワーク)。この五つはウィークデー用で総額890万円ほど(photo 本人提供)
30代後半に資産2億円で外資系企業を退職したものの、しばらくのんびりしたら「飽きてしまい再就職した」都内在住のアラフィフ男性。趣味の高級時計をつけて週3で出勤(残り2日はテレワーク)。この五つはウィークデー用で総額890万円ほど(photo 本人提供)

ストレスで吐血した

「ストレスで食道がただれ、咳の弾みで出血したようです。血を吐いても、翌朝6時に出勤しましたが(笑)。とにかくつらくて退職したかったのが本音」

 その後「心の内で何かがプチッと切れて」、数社からの転職の誘いも断り、30代後半でFIRE。当時の資産は約2億円。

「2億円を“稼ぐ”のは、外資系トレーダーなら珍しくありません。でも2億円を“貯める”のは大変。年収が額面5千万円でも、手取りは2800万円程度でした。資産2億円というのは、ボーナスで受け取った自社株の値上がりが貢献しています」

 会社を辞めて、まずは温泉地に長期滞在しながら読書三昧の日々。「とにかく最初はアホみたいに寝ていた」。だが、徐々に暇を持て余すようになった。

「30代後半というと、同世代の友人は誰も退職しておらず、平日に遊ぶ相手も限られて。寝ることにも旅行にも飽きました。結局、約半年後には国内の金融系の会社に再就職

 現在は自分のペースで働いており、ストレスとは無縁だそう。再就職後に人生のパートナーとも巡り合った。一方、物欲には大きな変化が生じたようだ。

「昔はポルシェに乗り、高価なブランド品も買っていました。今は、趣味の高級時計くらい」

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