穂高さんが関わった田んぼ(photo 本人提供)
穂高さんが関わった田んぼ(photo 本人提供)

 加えてブログ読者からの資産運用などに関する相談への回答、コラム執筆や講演、各種メディアの取材対応・出演などで忙しい時期もある。だが、激務だった会社員時代と比べれば、はるかにスローな時間が流れている。

「自由な時間には水泳やスキー、登山、テニス、旅行などを楽しんでいます。スペイン語などの勉強も続けています」

 FIREを機に、エバンジェリスト(伝道師)のような立ち位置でさまざまなメディアに登場しているのは、関西在住の桶井道(おけいどん)さん(48)だ。20代の頃は日本株を買っていたが、米国株をメインとする高配当株・増配株へシフトし、約1億円を蓄財。2020年10月、47歳のときに会社を辞めた。

 投資家で執筆家、ついでに節約家、というのが桶井道さんの現在のマルチな肩書。メディアからの取材依頼には快く対応し、自らも積極的に寄稿する理由についてこう述べる。

「私がFIREを目指した頃は関連書籍が見当たりませんでした。自分が情報発信することで、僭越ながら社会貢献につながるかもしれないと考えました」

 その後、21年3月に著書も出版。予想外だったのは、臆測にすぎない誹謗中傷がネット上で散見されたことだ。たとえば実家で両親と同居していることに対して「経済的に自立していない」と揶揄された。

桶井道さんは昨秋、47歳・資産約1億円でFIRE宣言。マスコミの取材が増え、1年で21の紙、ウェブ媒体に載った。出版社からの依頼により自分でも原稿を書くようになり、今後2本のウェブ連載が始まる(photo 本人提供)
桶井道さんは昨秋、47歳・資産約1億円でFIRE宣言。マスコミの取材が増え、1年で21の紙、ウェブ媒体に載った。出版社からの依頼により自分でも原稿を書くようになり、今後2本のウェブ連載が始まる(photo 本人提供)

働くほうが性に合う

 しかし、現時点における桶井道さんが受け取る配当金は月額換算で約10万円。他にもブログからの広告収入や印税、取材謝礼、原稿料などで、1カ月の手取りは約37万円に達している。年収にして約440万円だ。難病を患う父親の介助を行いながら、母親と家事も分担。10月からは、こども食堂でのボランティア活動も開始した。

 そもそも個人資産を1億円以上持っていて、21年だけでも1千万円以上、資産を増やしている。これで経済的自立をしていない、と言われたら誰が「自立している」のか。

「ひたすらのんびりして何もしないのがFIREだと思っている人もいますが、そんな毎日ではつまらない。私は、働いているほうが性に合っています。それ以上に強いのは、社会に貢献したいという気持ちです」

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