「A子さんは時間をかけて、希望する支援は何か、何度も話し合い、オーダーメイドの形で契約を交わしていました。最期まで自宅で過ごしたいと思っても、認知症になると在宅での生活は危ないので施設に入らざるを得なくなることもあります。そのような時の手配も行います」(太田垣さん)

 A子さんは「甥、姪とは何十年も会っていないので頼りたくない」「できるだけ自宅で過ごしたい」という希望を持っていたが、脳挫傷の後遺症で、認知症が進んで転倒リスクが高まったため、特養に入居することになった。

 その間、要介護度の認定や介護保険サービスを使うためのケアマネジャーやかかりつけ医との打ち合わせ、さらには、特養への入居手続きなども、すべて家族に頼らなくてもスムーズに行われた。

 サポートしてくれる人がいないおひとりさまにとって、もしもの時に備えておくと安心な契約を「エンディング期に活用したい三つの契約」にまとめた。

(週刊朝日2021年12月10日号より)
(週刊朝日2021年12月10日号より)

 例えば、病気で入院した時だけでなく、高齢者住宅に入居することになった時にも、身元保証人は必要になってくる。

◆「自分らしさ」や「尊厳」を保つ

 判断能力はあっても、足腰が不自由になった時、定期的な見守りをしてもらえると安心できる。また、金融機関での預金の引き出しや公共料金の支払いなどの財産管理もお願いしなければならないケースも出てくる。

「(1)自立期とフレイル期」「(2)認知症で判断能力がなくなった時」「(3)亡くなった後」の三つの時期に分けて、自分ではできなくなりそうなこと、具体的に困ることを話し合いながら支援の内容を整理するといい。

 中には認知症になる前に亡くなる人もいるので、(2)は任意後見契約をしても利用しないケースもあり、その場合、任意後見人や任意後見監督人への費用は発生しない。

(3)の死後事務委任契約の報酬には基準はなく、受任者(委託を受けた人)への報酬の相場は30万~50万円。ここに、遺品整理業者への費用など実費がかかる。お願いする業務が多いほど価格は上がるが、無事にお墓まで連れていってくれる。

 エンディング期に託すことを事前に決めておけば、「自分らしさ」やその人の「尊厳」を保つことができる。そうした意味から、太田垣さんの会社では、オーダーメイドで行うサービスを“尊厳信託”と名付けたという。(ライター・村田くみ)

週刊朝日  2021年12月10日号より抜粋