※写真はイメージです (GettyImages)
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 首都圏のある特別養護老人ホーム(特養)で暮らすA子さん(80代)は、“もしも”の時に備えて元気なうちに準備をしていたことで、安心して余生を送れている。

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 独身で後継ぎもおらず、親が建てた一軒家で生活していた。両親を看取ってからは週1で銀座や日本橋のデパート巡りを楽しむなど、アクティブに過ごしていた。そんな中、数年前、突然のアクシデントに見舞われた。

 いつものようにデパート巡りに出かけた時に、過って地下鉄のホームから転落してしまったのだ。電車が通過した後だったため命に別条はなかったが、腕と足を骨折し、脳挫傷を負ってしまった。

 A子さんは、「緊急連絡カード」を携帯していたため、事故処理をした警察がカードに書かれた身元保証人に連絡をしてくれた。保証人が入院の手続きを行い、医師や看護師とやりとりして、急場をしのいでくれた。

「A子さんは姉と妹がいましたが、両親を看取った後、相続をめぐって気まずい関係になり、音信不通になってしまいました。甥や姪にも世話になりたくないとの思いから、私どもの会社と“尊厳信託”を契約していたのです。療養中に適切な判断ができなくなったA子さんに代わって、私たちがあらゆる手続きを行う契約です」

 そう語るのは、『家族に頼らない おひとりさまの終活~あなたの尊厳を託しませんか』(ビジネス教育出版社)の共著者で、OAGライフサポート代表取締役の太田垣章子さん。太田垣さんは司法書士として、多くの高齢者に寄り添い、サポートし続けている。

 A子さんは、定期的な「見守り契約」と、将来判断ができなくなった時に備えて、入院時や高齢者施設への入居時に必要な「身元保証人」をお願いしていた。また、財産管理を行う「委任契約」、認知症になった時の財産管理等を行う「任意後見契約」、亡くなった後の手続きを代行する「死後事務委任契約」もセットで、太田垣さんの会社に託していた。

 未婚や離婚に限らず、子どもと同居する世帯も減少していることから、頼れる家族がいないという人もいる。太田垣さんの会社にも“もしも”の時に備えようという人からの相談が年々増えているという。特に50代、60代と若い世代からの問い合わせもあるそうだ。

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