小泉今日子 [撮影/写真部・加藤夏子、ヘアメイク/宮田靖士(THYMON Inc.)、スタイリング/藤谷のりこ、取材協力/スパイラル]
小泉今日子 [撮影/写真部・加藤夏子、ヘアメイク/宮田靖士(THYMON Inc.)、スタイリング/藤谷のりこ、取材協力/スパイラル]

 誰かの心に灯る光を尊重し、大事にする。それこそがものづくりの原点かもしれない。「小泉さんの心に光が灯るのはどんなときですか?」と聞くと、「私が見つける光は、いつもおっきな光じゃなくて、小さな『ピカン!』みたいなものばかりです」と答えた。

「私は、それこそがインスピレーションだと思っています。だって、いつもそこからいろんな発想が生まれていくから。自分でものを作るときは、いろんな材料を並べて、それをジロジロ見つめながら一回解体する。そして解体されたものをじっと見つめているうちに、『ピカン!』って閃くんです。『これとこれをこうすれば、可愛いのができた!』みたいに(笑)。そんな感じでよく仕事をしてます」

 そう話しながら、「でも、『ピカン!』を体験するためには、砂浜で、貝殻集めてるみたいな時間がいっぱいないとダメなんです」と説明を続けた。

「前にも誰かと話したんだけど、インスピレーションとか勘って、降りてくるまでに努力も必要なんですよ。その努力っていうのは、いろんなことを経験して、引き出しを増やすこと。組み合わせるためのパーツを複数持ってないと、『ピカン!』も降りてこない。例えば、私が原稿を書くときって、結構なダラダラタイムが必要なんです。物理的にも精神的にも、最初は、『今ちょっと、部屋が散らかっているな~』って感覚なんですよ。片付けたいんだけど、片付ける気がしなくて。頭の中をぐるぐるさせながら、部屋の中をウロウロしたり(笑)。でも、そのままだと埒が明かないから、今度は、何かに対する罪悪感みたいなのを二つ並べて戦わせる」

 そこで小泉さんが対決させた罪悪感が、「昨日、お風呂に入らずに寝てしまったな。どうしよう?」と「原稿を書く気がしないな、どうしよう?」の二つ。

「その二つを戦わせると、私の中で、『わかった、戦うっていうよりまずお風呂に入ればいいんじゃない?』ってなる。それでお風呂に入ると、『書けない』あるいは『書きたくない』の言い訳の一つが消えて、『だから書けなかったんだ』ってわかる(笑)。自分の中の罪悪感を戦わせることで、言い訳が消えていって、心の中のとっ散らかった部分が整理されていくんです。でも、とっ散らかっている感覚があるからこそ整理もできるわけで。そこが空っぽだと『ピカン!』は生まれない。子供の頃に観た映画も、夢中になって読んだ本も、一つも無駄なものはないんだなと思いますね」

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