
「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
【写真】片手が不自由な車いすユーザーでもお出かけが楽になる車いすが画期的!
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秋の行楽シーズンになりました。皆さまはどこかにお出かけの予定はありますか?
私は今、この原稿を、車の点検中に自動車ディーラーの待合室で書いています。我が家の車はスロープのある福祉車両です。この車を購入してから、医療的ケアが必要な娘を連れて外出しやすくなりました。
今回は、まだあまり知られていない福祉車両のことを書いてみようと思います。
車いすのまま乗れる車を
子どもたちが生まれてから、双子用のベビーカーを入れるためにトランクが大きい車にしたり、荷物や移動距離が増えた時期にはワゴン型に替えたりと、その時の我が家のニーズに合わせて車種を選んできました。
いずれは長女のために、車いすのまま乗ることができる福祉車両を検討する必要があるとは思っていましたが、「いずれ」はまだ何年も先のような気がしていました。ところが、ある日突然、乗っていた車に不具合が出て修理代がかなり高くなると分かったとたん、一気に福祉車両に興味がわいたのです。
夫には以前から好きなメーカーがあり、車種はその会社のパンフレットの中から決めるのが私たちの主流でした。でもそこには福祉車両はありませんでした。
輸入車は確かにかっこ良いけれど、スロープやリフトは全て後付けです。さらにオプションで付けるものは、どれも大きくて重くてとても高価でした。
長女との毎日の生活のためには専用につくられた車の方が良いと思い、別のメーカーに替えたいと夫に相談してみました。
正直なところ、夫ははじめはあまり乗り気ではなかったようです。でも、毎朝身長150センチの長女を横抱きにして車に押し込むように乗せていたことや、カーシートのサイズが合わなくなり身体が傾くようになっていたため、話を進めていくうちに納得してくれました。
福祉車両は車いすのままリクライニングした状態で乗れるため、長女の身体の負担軽減になることが決め手だったようです。