「シン」と入れたのは「シン・ゴジラ」のパクリです。なぜ「シン・ゴジラ」と名付けられたのかはわかりませんが、「シン」は、新とも、真とも、心とも、神ともにとれて非常に多面性があります。このどうにでもとれる「シン」が気に入りました。確か故日野原重明先生が「新老人の会」というのを作っておられたように記憶しています。その日野原先生の「新」が「シン」になったところに別の新しさがあるように思います。話はそれますが、僕は日野原先生の著書のほとんどを愛読していて、亡くなられたあとも、先生に私淑して勝手に僕の主治医になってもらっています。そんな訳で「シン・老人」になじんでいただければと思います。

 僕は何か身体に異変を感じるとすぐ病院に行きます。病院を怖がる人もいますが、僕にいわせれば、自分を知ることを避けているんじゃないかと思います。自分の身体探究することは、「自分自身は一体何者なんだ」ということを知ることではないかと思います。病院を怖がることはシンの自分を知ることを恐れているからではないでしょうか? 自分の身体を知ることで自由のキャパが拡がります。

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰。

週刊朝日  2021年12月10日号

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