宝満宮竈門神社(福岡県太宰府市)にファンが奉納した数々の絵馬。キャラクターのイラストも描かれている(撮影/河嶌太郎)
宝満宮竈門神社(福岡県太宰府市)にファンが奉納した数々の絵馬。キャラクターのイラストも描かれている(撮影/河嶌太郎)

 実際、アニメ1期26話で描かれた通称「パワハラ会議」も、一連のやり取りはどこかコミカルだ。YouTubeやニコニコ動画にも、このシーンを面白おかしく改変した動画がいくつも上がっている。

 現在放送中の第2期のアニメは全26話の予定で、7話までが劇場版を再編集した「無限列車編」。8話以降が「遊郭編」という構成になっている。

親ガチャに立ち向かう

 2期のアニメを通じたテーマは「生きろ」であると、前出の植さんは分析する。

「『遊郭編』では、『無限列車編』ではあまり出番がなかった我妻善逸(あがつまぜんいつ)が大活躍します。作品を通じて、『生きる原動力を自分でつかめ』がテーマとして描かれていると思いますが、『遊郭編』は善逸をはじめ、主人公たちがさらなる成長を遂げるきっかけとなる重要なパートです」

 善逸をはじめ、「鬼滅の刃」には家庭に恵まれなかった登場人物も多い。それは、世にいう生まれガチャ、親ガチャに立ち向かう物語でもある。

 アニメ「鬼滅の刃遊郭編」は、12月5日から放送開始される。「無限列車編」で仲間の死を乗り越えた炭治郎たちは、どう成長するのか。その成長を目にすれば、自分も「頑張ろう」と心が沸き立つかもしれない。

「鬼滅の刃」は、さまざまな局面で現代人が感じる「窮屈さ」に出口を与え、時には鼓舞し、時には笑い飛ばしてくれる。多くの人の心の教科書であり、大いなる共感の物語だ。(ジャーナリスト・河嶌太郎)

久留米駅(福岡県久留米市)に停車中の「SL鬼滅の刃」。指定席券は発売直後に完売した(撮影/河嶌太郎)
久留米駅(福岡県久留米市)に停車中の「SL鬼滅の刃」。指定席券は発売直後に完売した(撮影/河嶌太郎)


AERA 2021年12月6日号より抜粋

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