11月中旬、AERAがインターネットを通じて行った「鬼滅の刃」についてのアンケートには、作品について様々な感想や思いが寄せられた(photo 植田真紗美)
11月中旬、AERAがインターネットを通じて行った「鬼滅の刃」についてのアンケートには、作品について様々な感想や思いが寄せられた(photo 植田真紗美)
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 社会現象を巻き起こした『鬼滅の刃』。今年10月からはアニメ2期が放送中で、12月5日には「鬼滅の刃遊郭編」がスタートする。作品の人気の秘密、2期のテーマや魅力を分析する。「鬼滅の刃」を特集したAERA 2021年12月6日号から。

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 伝承文学の研究者で、AERA dot.で「鬼滅の刃」に関する連載を持つ神戸大学の植朗子さん(44)は、「鬼滅の刃」という作品の特徴をこう分析する。

「敵役である鬼を単なる敵として描くのではなく、それぞれの鬼が鬼になった動機や、その後の行動理念も一人一人丁寧に描いている。そしてそれは、肯定も否定もされない。そこに多くの人が共感を覚える余地が残されているのではないでしょうか」

多様性が時代とマッチ

 実は植さん自身も、「鬼滅の刃」に強い共感を覚えた身だ。

「仕事や家庭での役割に思い悩むことがあり、文学を研究する仕事をしているにもかかわらず、読むことも書くこともできなかった時期がありました」

 その時、たまたま少年ジャンプを開き、自身の先祖と対峙するキャラクターを見た。

「その生きざまに触れ、涙しました。『物語の力』を再認識したんです。『まずは手を動かそう』とその日のうちに、夢中で原稿を書いていました」

 北海道大学でアニメについて研究する、アニメコラムニストの小新井涼さん(32)さんも、間口の広さに注目する。

「家族愛や友情など、さまざまな人に刺さるポイントがあると思います。鬼殺隊と鬼、どちらも様々な過去や因縁を背負っていることが描かれ、双方に人気があるのも納得です。どちらの陣営でも一筋縄ではなく、登場人物の感情はさまざま。こうした『多様性』が時代に受け入れられたのではないでしょうか」

 随所に差し込まれるコメディータッチな描写も秀逸だという。

「シリアスに描きすぎず、コミカルにもなりすぎず、絶妙なさじ加減です。だからこそ、現実社会で自分の抱える問題と適度な距離を取りながら、エンターテインメントとして幅広い共感を呼ぶことができた」

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