
結成50年、フレディの死から30年。足跡をたどるQUEEN展が開催中。「ボヘミアン・ラプソディ」に代表される70年代に限らない、彼らならではの魅力がそこに。AERA 2021年12月6日号の記事を紹介する。
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大型スクリーンに映し出されたフレディ。一度見たら忘れられないあの顔が、マイクを手に歌い上げる。1985年7月、世界規模で開かれたロックのチャリティーコンサート「ライブ・エイド」でのクイーンの雄姿である。

ああフレディ・マーキュリー。早世したロック界のマラドーナ、異形の大輪の華よ。フレディなくしてクイーンが不朽の存在であることは、おそらくなかったろう。91年にエイズのため45歳で死去。その生涯を描いた大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」のクライマックスは、圧倒的パフォーマンスで語り草になったこのシーンだった。
フレディ、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコン。不動のメンバーがそろった結成から50年、フレディの死から30年の今年、その足跡をたどる「QUEEN50周年展」が東京・渋谷の西武渋谷店モヴィーダ館で開催中だ(来年2月13日まで)。

メンバー4人の子どものころの貴重な写真(ブライアンの女装姿など)に始まり、前身バンド「スマイル」時代、73年のデビュー、そして美貌の4人が織りなす、ロック史に輝く不滅の名曲「ボヘミアン・ラプソディ」に代表される怒濤の快進撃が年代順に紹介される。
80年代は人気低落?
QUEEN展は結成40周年の年や昨年初めにも開かれたが、「今回はあまり日の当たらない『ライブ・エイド』後の80年代後半以降に焦点を当てた」と製作委員会の担当者。86年の欧州ツアーでフレディが身にまとったド派手なマントと王冠や、晩年の曲「愛しきデライラ」のアイデアが走り書きされたメモ用紙の展示が目を引く。

「彼は先が長くないのはわかっていたけれど、決して哀れみを乞うようなことはなかった」
とフレディについて語るブライアンの最近のインタビュー映像も。
「企画の趣旨はとてもうれしい。80年代の楽曲はずっと無視されがちだったから」
と話すのは朝日順子さん(51)。英語と日本語のバイリンガルで、全楽曲の歌詞を解説した『クイーンは何を歌っているのか?』を一昨年に出版。曲を深掘りするNHK-FMの毎週日曜の番組「ディスカバー・クイーン」にも出演している。
朝日さんと一緒に、クイーン展を見て回った。