持続可能性を実現するために、企業にも環境や社会へのやさしさが求められている(写真:gettyimages)
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 個を大切に伸ばすこと。それはいま、職場に求められていることでもある。一人ひとりがやりがいを持ち、持続可能な働き方を実現するうえでも、キーワードのひとつは「やさしさ」だ。AERA 2022年11月7日号から。

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「強さ優しさレビュー」というユニークな項目を人事評価に取り入れているサステナブル・ラボという会社がある。同社は、企業のESG/SDGs貢献度を数値化した非財務データバンク「TERRAST(テラスト) β」などを開発・提供する。

「もともと『強さ・優しさ』という言葉は、私たちの事業を説明する上で、『財務・非財務』のメタファーとして使い始めました」

 と説明するのはカルソ玲美さん。東京工業大学大学院で社会工学を学んだのち、国連難民高等弁務官事務所やNPO、外務省、JICAなどで途上国支援に携わった経験を生かしてCSO(チーフ・サステナビリティーズ・オフィサー)として創業期から同社に参画している。

■環境や社会にやさしさ

「これまでの資本主義では、企業の価値は売り上げや収益力といった経済的な強さだけで判断されてきました。ところが、持続可能な社会は強さだけでは目指すことができません。強さに加えて環境や社会へのやさしさも持っている企業が選ばれる時代になっています」

 同社ではAIとビッグデータの活用で、各企業の非財務面のデータを広く収集し提供する。

 項目はCO2排出量や水の消費量、廃棄物排出量など環境的な要素に関連するものから、女性管理職率、独立取締役の数、取締役の年齢幅などダイバーシティーに関するものまで多岐にわたり、その数は700を超える。

 強さ・優しさという指標については、

「企業の指標とするだけでなく、私たち自身も強くてやさしい人でありたいし、そういう人材の市場価値が上がっていくと考え、人事評価にも取り入れることにしました」

「強さ優しさレビュー」を作った昨年8月当時はまだメンバーが6人ほどだったが、その後に組織を拡大する計画があった。

「拡大していく時に北極星のような指針があったら、みんなそれぞれで走っていても、同じ方向に進むことができます。北極星を積極的に言語化することは、常に意識しています」

 できあがった項目で、現時点では査定はせず、これらについて毎月自ら振り返りを行った後に上長と話し合い、躓(つまず)いている部分に関して軌道修正するという形で運用している。

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