新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」が世界に波紋を広げている。従来株よりも感染力が強い可能性があるというが、ワクチンや既存の治療薬は効果があるのだろうか。AERA 2021年12月13日号から。
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感染の広がりやすさには、より速く増殖する、あるいはより少量でも感染するなどウイルスのいろいろな側面が関係するが、オミクロン株についてまだ詳細はわかっていない。
香港の衛生当局によると、強制的な隔離生活を送るホテルで、カナダからの渡航者が、向かい側の部屋で隔離生活を送っていた南アからの渡航者から感染したという。渡航者は部屋の外に出ることはできないので、南アからの渡航者がドアを開けた時に、適切な種類のマスクをしておらず、感染が広がった可能性があるという。
そうだとすると、対面もしておらず、同じ時に同じ空間にもいなくても、感染が成立したということになる。しかも、2人ともファイザー製ワクチンを2回接種済みだったという。
既存の治療薬の効果は変化しないのか。WHOによると、感染者の免疫に働きかけて重症化の原因となる炎症を抑える抗炎症薬、ステロイド(デキサメタゾン)と、もともとリウマチ治療薬として使われていたJAK阻害剤(バリシチニブ)は引き続き効果があるという。
一方、それ以外の、抗体カクテル療法などの抗体医薬品や、抗ウイルス薬などウイルスを標的にした薬については、変異によって効果がどう変わるか、今後、検証が必要だという。
薬の効果だけでなく、オミクロン株に感染すると従来株の場合よりも重症化しやすいか、より少量で感染が成立するのかなど、まだ不明な点は多い。
ワクチンの効果が低下し、より感染が広がりやすい場合、どのような対策を取ればいいのだろうか。
東京都医学総合研究所感染制御プロジェクトの小原道法・特別客員研究員はこう強調する。
「ブースター接種を前倒しに実施できれば理想的ですが、ワクチンがなければそれは無理です。個人の対策は、どんな変異株に対してでも同じです。3密を避け、マスクをつけ、手洗いをするという基本的な感染防止策を徹底することが大切です」
(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2021年12月13日号より抜粋