「このところ『舞踏会の手帖』を楽しんでます」とのこと。
かつての名作映画「舞踏会の手帖」のように懐かしい人々を再訪しているということだろう。若き日の夢を反芻する才能の持ち主だ。
行天一家は父上はじめ、大蔵官僚として有名な弟の行天豊雄氏などみな長寿。たしか父上は百歳過ぎまで生きられた。寿命にも遺伝はあるようだ。
その秘訣は? 若い頃はメモ魔で場所、時刻など刻明に記録を残されていたが、あの膨大なメモはどうなったか。
私たち三十五期生が養成を受けたのは、皇太子ご成婚の年の一九五九年。内幸町に放送会館があった。ほとんどの放送はナマ。道をはさんで向かい側の、今にも倒れそうな飛行館ビルの旧館で養成。やんちゃで先輩から目をつけられていた。
私だけ、食事だけで泊まらずに帰った。次回を楽しみにして。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2021年12月17日号