TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。「日本語ロックと松本隆」について。
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「風街オデッセイ2021」とは、なんて素敵なライブのタイトルなのだろう。「オデッセイ(odyssey)」とは「長い時間の冒険旅行」「放浪」という意味だ。
今でこそ日本語で歌われるロックは当たり前になったが、半世紀前、海の向こうで生まれたロックを日本語に定着させる試みを、先輩のミュージシャンたちから喧嘩を吹っかけられながらも敢然と決行したバンドが、松本隆、細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂の「はっぴいえんど」だった。
僕がこのほど上梓した『松本隆 言葉の教室』でのインタビューで、「当時、ロックのリズムに日本語は合わないっていわれてね」と松本隆さんは語った。
世界3大ギタリストといわれたエリック・クラプトンのアドリブを完コピするのがかっこいいといわれる時代だった。
「でも、それはクラプトンがかっこいいのであって、真似をする人がかっこいいわけじゃない。はっぴいえんどはオリジナルでいかないと。それをどうつくっていくかだった」
高度成長で失われていく街への思いを、美しく幻想的な日本語で綴った松本さんの歌詞により、はっぴいえんどは日本語ロックの源流になった。
自らのふるさとを「風街」と呼ぶ松本さんのセンスは、バンド解散後、作詞家として活動を始めて日本の音楽界の何もかもを変え、400組近くに2100曲以上の歌詞を書き、総売上枚数5000万枚以上、ヒットチャート1位となった作品が50曲以上という、とんでもない地平を作った。
先月行われた、松本さんの作詞活動50周年を記念するライブが「風街オデッセイ2021」。2日間で40組以上のミュージシャンが日本武道館のステージに立った。
2日目に足を運んだ僕は舞台上手を覗く席から、後半はたまらずにアリーナ後ろで関係者に交じって。そこにはステージをじっと見つめる松本さんの後ろ姿も!