葉山の自宅で語る藤野英人さん。レオス・キャピタルワークス会長兼社長、同社が運用する投資信託「ひふみ」シリーズの会社全体の純資産総額は2021年5月に1兆円突破(撮影/写真部・馬場岳人)
葉山の自宅で語る藤野英人さん。レオス・キャピタルワークス会長兼社長、同社が運用する投資信託「ひふみ」シリーズの会社全体の純資産総額は2021年5月に1兆円突破(撮影/写真部・馬場岳人)

■満員電車に乗らない生活を誓った

 藤野さんの「脱ラッシュ構想」は若手サラリーマン時代にさかのぼる。大学を卒業して最初の勤務先は野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)だった。千葉県北東部の柏市から職場のある東京・日本橋まで、通勤時間は1時間40分―。

「会社の近くに住んでも、タクシーを利用してもいい、満員電車に乗らない生活をしようと、すし詰めの車内で心に誓いました」

 27歳で外資系運用会社のジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に転職した。

「その頃には会社の近くに住めるようになり、満員電車から解放されました。レオスの従業員にも、通勤ラッシュを経験させたくありません」

■レオスを運用業界の「アップル」に 

「ひふみ投信」は有望な銘柄を厳選し、市場平均を超えるリターンを狙う。正統派のアクティブ型投資信託(以下、投信)だ。

 一方、資産運用の世界では米国のS&P500や日本のTOPIX(東証株価指数)の銘柄構成通りに銘柄を組み入れるインデックス型投信が、驚くほど安いコストを武器にシェアを伸ばしている。

 藤野社長はインデックス型投信を認めたうえで「レオスを『運用業界のアップル』に」と言った。

「携帯端末の世界シェアはアンドロイドとアップルが、ざっくり7対3。でも収益はアップルが7~8割を押さえています。アップルの製品はすごく高いけど、付加価値を認めてお金を払うユーザーがいるからです。インデックス型はコスト面以外での差をつけにくい。でもアクティブ型なら、他と違う、レオスの独自性をアピールできる」

 ファンドの付加価値といえば、高い運用成績ということになるだろう。そのためには組み入れ銘柄の選択眼が重要。藤野さんが企業のよしあしを見極める源泉となったのは野村時代の最初の配属先で担当した中小企業調査だ。

「大企業の人たちと違い、中小の人たちはパワフル。自分の人生で会ったことのない人たちばかりで、最初は抵抗がありました。でも、3年ほど中小企業に足を運ぶうちに、抵抗感が憧れに変わりました。自分も起業して、証券会社から訪問される側になりたい、と」

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