AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。
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Q:4年前から精神疾患で働けなくなって生活保護を受けて一人暮らしをしています。受給し始めた時期に、友達や好きだった人に今の自分を見られたくない、知られたくない思いで、LINEを全て消しました。今は体調も回復して、少しずつ人と話したい気持ちが復活しています。自分から急に連絡先を消しておいて、また過去の友人に会いたいな、と思うのはわがままでしょうか?(女性/無職/29歳/うお座)
A:僕は、精神疾患というものはどの人にとってもすぐ隣にあるものだと思っています。朝起き上がれなくなってしまうことは誰もが体験します。でもなんとなくいい風が吹いたり、寝ているうちに忘れてしまったり、苦しい時期があっても発症には至らない人がいます。一方で真面目に取り組み続けてしまった人、自分の限界に気づかないで周りに貢献したり、適応の限界を超えてしまい、疾患が現れてしまうこともある。本当に、紙一重の差だと思っています。
それでも、一度精神疾患になってしまった方々の焦りは、想像できないぐらいつらいものなのだと思います。以前の自分のスピード感だったり、勘の良さみたいなものも、どうしても変わってしまいます。自分が乗っている乗り物が変わってしまうとか、見知らぬ土地に引っ越してしまったかのような心細さと言ってもいいかもしれません。元いた場所が当然懐かしくなるし、「あの頃の自分に戻りたい」と思って頑張ってしまうこともあると思います。
役に立つかどうかわかりませんが、ぜひお伝えしたいことがあります。この方のつらさとは比較にならないかもしれませんが、昔、僕は大失恋をしてしまって、何年間かその失恋のダメージが続いてしまったことがありました。
別れた相手の友人たちとも仲が良かったんですが、当時僕のことを心配したその友人たちから「しばらく会うのをやめよう」と言われました。
「私たちと会うと、あなたはあの人の影を見てしまうから」と。変な言い方だけど、「せっかく失恋したのだから、ゼロからやり直すタイミングなんだよ」と言われたんです。ゼロからやり直して、自分の中で新しい土地を開墾し終えた時にまた会おう、とはっきり言ってもらったことにすごく助けられました。そしておかげで今も良い友人関係が続いています。
昔の友達に会いたい気持ちもものすごくわかるんですが、やっぱり自分の昔のスピード感や、その人たちといまの自分を比べてしまう面もある気がします。
ネガティブな意味ではなくて、必要なときに距離を取ることができるのも、いい友人関係だなと思うんです。
新しい友達を作りましょう、というわけではありません。お気に入りのパン屋さんの常連になるとか、まずは自分の生活圏の中で応援したい店、応援したい人を増やしていってみてはどうでしょうか。新しいコミュニティーに居場所を作ることも意外と難しくないかもしれませんよ。
◎しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気
※AERA 2022年11月7日号