「このとき、まず確認することは、介護を受ける本人が寝起きする場所をどこにするか。1階にキッチンやお風呂、リビングなど、家族が集まる空間があり、2階がそれぞれの寝室という作りの一戸建ての場合には、本人の居室を2階から1階に移せるかという検討をすることが多い。動線の中での段差をなくし、なるべく移動をコンパクトにまとめられるほうが安心という視点からです。加えて、料理の音や家族の話し声など、生活動作音がしている中で暮らすほうが刺激も受けるし、孤独を感じない。利便性と環境の両方の視点から、それぞれの状況に合わせた調整を行います」

 リフォームの工事業者は、なるべく数社から見積もりをとって比較した上で決められるとよい。現在は、介護保険の工事を専門に請け負う工事業者も増えていることから、ケアマネジャーや専門業者に任せきりにせず、インターネットを活用するなどして比較検討したい。役所や地域包括支援センターでも、工事業者の一覧表などを用意している場合があるので、問い合わせてみるとよいだろう。

 一方、住宅改修工事までいかずとも、介護保険で借りられる福祉用具類で間に合うケースもある。例えばお風呂。滑りやすく段差の多い風呂場は転倒リスクが高く、特に注意したい場所の一つだが、「リフォームまでしなくても、工夫次第で何とかなる場合も多い」とは、『自宅で最期を迎える準備のすべて』の著書で知られる看護師の大軒愛美さんだ。

「浴槽が深くてまたぐことが困難な場合には、浴槽内での立ち上がりや、またぎ動作の補助となる浴槽台や浴槽内椅子を使って高低差を減らすといった工夫で、工事をせずとも大丈夫というケースも。手すりの設置も、工事をしなくてもレンタルで間に合う場合も多い。まずはレンタルで試してみて、どうしても足りないという部分があればリフォームを考えるとよいかもしれません」

週刊朝日2021年12月17日号より)
週刊朝日2021年12月17日号より)

 例えば、電動介護用ベッドや介護バーなどの福祉用具が、介護保険を使ってレンタル可能だ。このほかにも借りられるものはたくさんあるため、あると便利そうなものがあれば、ケアマネジャーなどに相談してみよう。リフォームとレンタルを組み合わせることで問題なく過ごしている例もある。(フリーランス記者・松岡かすみ)

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週刊朝日  2021年12月17日号より抜粋

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