国立成育医療研究センター研究員、キタ幸子さんらは6歳未満の子を持つ母親884人にアンケートを実施し、内容を分析した。その結果、児童虐待の一つで両親間の暴力を目撃する「面前DV」にさらされた子どもでも、保育園などの保育サービスに通っている場合、心身への悪影響が緩和されていた。キタさんらは理由について「機能不全に陥った家庭の外で、他の大人と関わることが、子どもたちの自己肯定感を回復しストレスを和らげるのではないか」とみている。

 キタさんには、親から激しい暴言や暴力を受けた友人女性がいるという。この女性は世代間連鎖を断ち切り、虐待のない子育てをしている。女性はキタさんに、子ども時代に毎日のように隣家の夫婦を訪ねていた、という思い出を語った。

「隣のおじさんとおばさんが必ず『あなたは悪くない、いい子だよ』と言ってくれたの。私はその言葉をポケットに入れて持ち帰り、ベッドの下にためておいた。つらいことがあってもその言葉を取り出せたから、自分を信じる力を失わずにすんだ」

 キタさんは言う。

「周囲の大人の目配りと言葉掛けが、子どもの『助けてくれる大人はいる』という信頼感を育てます。それは虐待の連鎖を防ぐためにも、とても重要です」

(フリーライター・有馬知子)

AERA 2021年12月13日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
ヒッピー、ディスコ、パンク…70年代ファションのリバイバル熱が冷めない今