会社はテレワークにしているため、自分の考えやアイデアはポッドキャストやブログで表現。この2年間で600件を超えた。考えを書いたら必ず反対意見も自分で数通り書く。自分をたたく作業と矢本は言う(写真=工藤隆太郎)
会社はテレワークにしているため、自分の考えやアイデアはポッドキャストやブログで表現。この2年間で600件を超えた。考えを書いたら必ず反対意見も自分で数通り書く。自分をたたく作業と矢本は言う(写真=工藤隆太郎)

 矢本は自分の会社を成長させることによって、育休が取りづらい日本の社会風土に風穴を開けたいと考えている。国がいくら音頭を取ろうが、大企業では、男性が育休を取る文化を醸成するには時間がかかる。そのため、社員が子育てしやすい職場環境を整えながら事業も成長させ、そんな会社が日本のマジョリティーになることでしか問題は解決できないと考えた。

 10Xには現在81人の社員がいるが、昨年は5人の男性社員が2~6カ月の育児休業を取った。男性の育休取得率は100%。転職して間もない人もいたが、矢本は「子育てを優先してほしい」と背中を押し、本人が2週間と申し出た社員には「子育ては大変なので長期の取得をお勧めします」と助言。

 パートナーが妊娠・出産した場合は、準備金として最大70万円を前払いで支給している。国からの育児休業給付金の振り込みは早くて4カ月後。若い世代の貯蓄状況を考えると、70万円が手元にあった方が安心して出産を迎えられると考えたからだ。

 また、認可保育園に入園できなかった場合、認可外保育園との差額負担や、子どもが病気になった時の特別有給休暇付与など、子育て世代の働き手の支援に手厚い。また介護サポート制度もあり、特別有給休暇だけでなく、介護休業取得時に30万円を支給。会社の福利厚生を充実させているのは、多くの人が経験する病気、出産、育児、介護などのライフイベントによって発生する「働きたくても働けない」状態を無くしたかったからだ。

 社員が育児休暇などで長期に休めば、他の社員に負担がかかる。しかし10Xでは仕事の透明性を上げる工夫をし、特にエンジニアなど専門性の高い分野は、プロダクトの仕様や意思決定の背景などをドキュメント化。誰もが、引き継いだ仕事をスムーズに行えるようにした。

「利用できる風土が育たないと、制度を作っても意味がない。社長である僕が長期育休を取り、地方に移住していることが、社員へのメッセージ」

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