『羽生結弦 飛躍の原動力』プレミアム保存版 (AERA特別編集) 絶賛発売中
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 難しい状況のときほど印象的な言葉を口にする羽生は、このシーズン中にたくさんの名言を残した。

「自分が弱いと思えるときは、強くなりたいという意思があるとき。だから、逆境や自分の弱さが見えたときが好き」(GPファイナル後)

「壁を乗り越えて見えるのは、壁ですね。人間とはそういうもの。課題を克服し、また何かを乗り越えようとすることに関して、僕は人一倍欲張り」(全日本選手権後)

「悔しい思いはネガティブに受け取られますが、僕にとってはポジティブ。悔しい気持ちは、先に進もうとしているって意味」(世界国別対抗戦前のインタビューで)

「苦しい、つらい、楽しい、幸せ。いろいろあって表現しきれませんが、僕の人生で絶対忘れることができない期間だった」(14~15年シーズンを振り返って)

 自分を信じる。苦しい状況でこそ自分はやるんだと信じ切る。そんな力が並外れている選手だ。

 五輪連覇を達成した平昌五輪で、またそれを示した。

 17年11月、GPシリーズ・NHK杯の練習で、羽生は右足首をねんざした。12月の全日本選手権も滑ることができず、4カ月ぶりの公式戦が五輪だった。けがをしてから約2カ月間、練習ができず、トリプルアクセル(3回転半)ジャンプを跳び始めたのは韓国入りする3週間前。4回転は、2週間~2週間半前だったという。

 身体的なコンディションは、良くはない。しかし、羽生はそんなときこそ心を燃やす。厳しい状況や予想を覆すことを、楽しみにしているかのようだ。

 18年2月16日、平昌五輪のSPがあった。ショパンのバラード第1番のピアノの調べにシンクロする美しく力強いトリプルアクセルを見せた。そのジャンプに対し、ジャッジ全員が出来栄え点で最高の3点をつけた。演技構成点の「音楽の解釈」につく点も30選手中最高、10点満点中9・75点を記録した。

 翌日のフリーでは、冒頭で4回転サルコーを決めた。細かいミスはあったが、後半の4回転サルコー-3回転トーループを成功。ときに鬼気迫る形相を見せながら、王者の力を見せた。

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「けがをしたからこそできた」