林:でも、大学は日大の文理学部でしたよね。芸術学部の演劇学科に行こうとは思わなかったんですか。
八嶋:演劇学科に行こうと思って、高2から高3になる春休みに一人で東京に来て、日芸の人にも会ったんですよ。「どんな芝居をやりたいの?」って聞かれて説明したら、「キミ、頭がいいなら東大か早稲田に行きなさい。東大には『遊眠社』があるし、早稲田には鴻上尚史さんの『第三舞台』がある。いま僕らがやってるのは古い演劇の勉強だから、キミがやりたそうな芝居をやってるやつらは、学校に来ないで外に出て小劇場でやってる」って言われて、けっこうショックだったんです。
林:まあ、そうなんですか。
八嶋:「僕、東大や早稲田に行ける頭のよさはないんで」って言ったら、「それじゃ授業がラクなところに行けばいい。哲学科がいいんじゃない? 実験もないし授業料も安いよ」って言われて、それで哲学科に行ったんです。
林:そうだったんですね。それでお芝居のほうは?
八嶋:僕の中高の同級生の松村武が早稲田大学にいたので彼にまぎれて演劇倶楽部というインカレサークルに入りました。そのサークルを母体に大学2年のときに「カムカムミニキーナ」という劇団を旗揚げしました。
林:でも、演劇一筋っていろいろ大変でしょう?
八嶋:学生のころは「養徳学舎」という奈良県出身者向けの安い学生寮に住んでましたし、先輩からいいアルバイトも紹介してもらえたので、じつは僕、やりたいことばかりやってきたけど、人生で一度も、お金に困ったことがないんです。
林:実家がお金持ちなんですか。
八嶋:金持ちじゃないですけど、中学のときから、「人より長くスネをかじるかも」って、親にジャブを打ち続けてたんです。そしたら感覚がまひしてきたのか、けっこう長いあいだ仕送りしてくれました(笑)。いまはもう返しましたが、僕はそんなに苦労しなかった気がしますね。
林:なんかお坊ちゃんの雰囲気、出てますよ。