腹膜透析へのケアは在宅医療としても認められており、訪問看護師が機械のセッティングに通うケースもある。

「APDでは夕方、機械のセッティングに来てもらい、うまく使えている患者さんが多いです。APDには遠隔機能もついているので、我々は病院のパソコンで患者さんの透析状況を24時間、見守ることができる。独居の高齢者にも可能な治療です」(古賀医師)

 また、腹膜透析は地震や台風などの災害時にも強さを発揮することが期待される。土谷医師によると、東日本大震災ではインフラが遮断され、透析施設に通えなくなった患者が亡くなったケースが複数あったが、腹膜透析ではそうしたことはなかったと言う。

「現在も豪雪地帯では車での移動が大変なので、冬場は透析施設の近くにアパートを借りて治療をする人が珍しくありません。一方、腹膜透析は透析液があれば基本的にどこででもできます」(土谷医師)

 先進国の多くで透析の10~20%を腹膜透析が占めるのに対し、日本は3%と少ない。日本では歴史的にまず血液透析が保険診療として導入され、透析クリニックが一気にできたことが大きいという。あえて腹膜透析を推す必要がなかったわけだ。

 だが時代は変わった。腹膜透析について詳しく知りたい場合は、「腎代替療法選択外来」のある病院を受診するのがポイントだ。腎臓の代わりとなる治療には、透析のほかに腎移植、透析施設と同じ機器を自宅に置いて血液透析をする方法(在宅血液透析)もある。

 腎代替療法選択外来では、複数の治療から、どの方法が患者に最適かを医療者と考え、決めていく。腎臓が血液をどれだけ濾過できるかを示す値であるeGFRが30未満の患者が対象だ。

「どの治療法が最適かは人それぞれです。大事なのは各治療のメリット、デメリットをよく聞いた上で、納得して治療法を選択することです。そうした人ほど、その後の病気の経過もいいことが明らかです」(金井医師)

 腹膜透析では前述のように、出口部に感染を起こさないよう注意する必要がある。また、腎機能がゼロになった場合は血液透析との併用、あるいは移行となる。こうした点もよく理解しながら検討してほしい。(ライター・狩生聖子)

週刊朝日  2021年12月24日号

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