「ぜんそくだからといって、必要以上に新型コロナウイルスを怖がる必要はありません。通常の感染予防対策をすること、ぜんそくの治療を継続することが大切です」(放生医師)
■自粛太りでぜんそくが悪化
事実、新型コロナウイルスが流行して以降、ぜんそくの症状が悪化して病院を受診する人は減少している。ぜんそくによる入院患者数も減少しており、昨年の3月以降は、それ以前と比べて半減という報告もある。
その理由としては、先述のように、新型コロナウイルスの感染予防対策が風邪やインフルエンザの予防にも役立ったことなどが考えられることに加え、昨シーズンはインフルエンザがほとんど流行しなかった影響が大きいとみられている。
「昨年流行しなかったからといって油断は禁物です。今シーズンはインフルエンザが流行する可能性が指摘されています。また、最近ぜんそく患者さんを診ていて気になるのが、自粛生活の影響で太ってしまい、症状が悪化している人がいることです。肥満は気道を狭くして症状を悪化させやすいため、気を付ける必要があります」(同)
そもそもなぜ、ぜんそくがあると、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすく、重症化しやすいのか。近畿大学病院呼吸器・アレルギー内科特任教授の東田有智医師はこう説明する。
「ぜんそくは、『気道の慢性的な炎症』です。炎症があると、風邪のウイルスなどをキャッチしやすくなります。このため風邪をひきやすく、風邪をひいてしまうとぜんそくの症状が悪化するという悪循環に陥ります」
ぜんそくの治療は、吸入ステロイド薬で気道の炎症を抑えることが基本となる。症状がなくても気道の炎症は残りやすいので、吸入薬を使い続けることが感染症予防のためにも大切だ。
■アレルゲンの量が症状の程度に影響
「近年大幅に減ってはいますが、日本では現在も年間1千人以上がぜんそくで亡くなっています。ぜんそくは死亡数をゼロにできる可能性がある病気です。そのためには、吸入ステロイド薬をきっちり使用することが大切です。むし歯にならないよう歯みがきをするのと同じように、症状がなくても毎日吸入してほしいのです」(東田医師)