※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 ぜんそくによって、新型コロナウイルス感染症は重症化するのだろうか──。流行から2年近くたった今、実際はどうなのかが明らかになってきた。本格的な冬のシーズンに向けた生活上の注意点を紹介する。

【イラスト】ぜんそくの症状を悪化させる原因は?

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 ぜんそくがある人が、風邪やインフルエンザにかかると、重症化しやすい。また、ぜんそくの症状も、風邪など呼吸器の感染症をきっかけに悪化することが多い。

 このため、新型コロナウイルスの流行により、ぜんそく患者のなかには「自分がかかるとコロナが重症化するのでは」「コロナでぜんそくがもっとひどくなるかも」と、不安を感じている人は少なくないだろう。新型コロナウイルスの患者を多く受け入れてきた国立国際医療研究センター病院呼吸器内科診療科長の放生雅章医師はこう話す。

「世界中のどの統計をみても、ぜんそくがあると新型コロナウイルスにかかりやすい、もしくは重症化しやすいという報告はありません。ぜんそくは新型コロナウイルスの発症率も重症化率も上げないと考えていいでしょう。むしろ、ぜんそく患者はそうではない人に比べて、新型コロナウイルスにかかりにくいというデータもあります」

 放生医師は、その理由を二つ指摘する。

「ぜんそくの人は、普段から風邪やインフルエンザにかからないように感染予防をしている人が多いとみられ、その対策が新型コロナウイルスにも生かされたのではないでしょうか。ただ個人の行動まではわからないので、あくまで想定です。もう一つの理由は、新型コロナウイルスの細胞学的な特徴です」

 新型コロナウイルスは、気道の細胞膜表面にある「ACE2受容体」というタンパク質に結合して感染することがわかっている。高齢者、喫煙者、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者は、ACE2の発現が増加するため、新型コロナウイルスにかかりやすく、重症化しやすいと言われる。一方ぜんそく患者で、特にアレルギー要因が強い人は、ACE2が減少していることがわかっている。このため、新型コロナウイルスにかかりにくいと考えられる。

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