バックパッカー街のカオサンのレストランでは、大型の紙コップを用意していた。夜の10時過ぎ、欧米人とタイ人女性のカップルがやってきた。僕らの隣に座り、ビールを注文。すると店は、タイ人女性となにやら話していた。そして出てきたのは、壜から紙コップに移されたビールだった。紙コップでよければ午前1時まで大丈夫なのだという。
知人によると、夜の9時以降は陶器のカップにビールを入れて出す店もあるという。
外から見て、ビールを飲んでいることがわからなければOKという裏緩和が、タイランドパスには含まれているようなのだ。見え見えでも、壜や茶色の液体が入っていることがわかるグラスなければいいわけだ。
「タイではこういうことをとり締まるのは警察です。紙コップや陶器の器で出していることは警察も知っています。コロナ禍で警察に入る賄賂も減っているといいますから」
バンコクに暮らす日本人はそういう。しかしタイ人はこうもいう。
「でも、感染が増えたら、自主的に自粛すると思います」
タイ人は自分たちの臭覚を頼りに、コロナ禍とつきあっている。
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。