「問題は山積みだけど、一つひとつできることを考えるしかない」と話す高橋さん
「問題は山積みだけど、一つひとつできることを考えるしかない」と話す高橋さん

 それでも持ち前の行動力と好奇心で、何とか打開策はないかと探っているうちに、新しい農業の在り方を見出そうとしている人々と出会う。農業に興味を持って関わってくれる地元の若者たち、そして、10年以上も耕作放棄地でのサトウキビ作りに取り組み、黒糖の販売で企業化を成し遂げた“黒糖ボーイズ”。彼らとの交流により少しずつ、実家の農地を守る“久美子の乱”は進んでいった。

■リモートで農地を守る方法を探る

「先に話したとおり、農業を始めたいからといって、いきなり農地を買うのは難しい。なので、たとえば共同で農地を購入したり借りたりし、平日は働いて週末だけ農業をするというのはどうだろうと。米は難しいでしょうけれど、畑なら可能です。きっかけがなかっただけで、やってみたい人は絶対いると思うんです。農家さんが広範囲を一人で作っていたから高齢化の今無理がでているんだと思う。農家以外が一人一畝ずつお百姓をする新しい打開策もあるんじゃないか。今、一緒に農業をしてくれる人を見つけているところです」

 課題が山積みのところに追い打ちをかけたのはコロナ禍。さまざまな問題は現在もまったく解決しておらず、今もなお地元で農業を続けることの壁にぶつかり、奮闘を続けている。

「コロナでしばらく帰れなかったこともあって、いろいろ止まってしまって。今年の11月に久しぶりに戻ったら、ウチ以外の、耕作を辞めてしまったミカン畑の木が“かずら”(葛)に巻き付かれて枯れたり、葛が大木になってウチのみかん畑が日陰になっていたり。アマゾンのジャングルみたいでした。父とチェーンソーで他の人の畑の木(元は草)を切ることをしたけど広すぎて手に負えなかった。水路の整備や草刈りもそうですけど、もともとはご近所の農家と協力してやっていたんですね。今は殆どいないから残った農家が全部しないといけない。農業は共同作業なんだなと実感しています」

 それにしてもなぜ、高橋さんはそこまでして実家の農地を守ろうとするのだろうか? 彼女と同じ立場になれば「農地が太陽光パネルに変わるのは時代の流れ。残念だけど、受け入れるしかない」と考える人がほとんどだろう。そのことを率直に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

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