毎年のように新星が現れるフィギュアスケートのロシア女子。2年前は「3人娘」が話題になり、今季はカミラ・ワリエワが世界最高点を更新、北京五輪の頂点へと駆け上がりそうな勢いだ。AERA 2021年12月20日号では、ロシア女子たちの強さの秘密に迫る。
【写真】戦国時代を勝ち抜くのは誰?華麗なるロシア女子フィギュア選手たちはこちら(全5枚)
* * *
11月に開かれたグランプリ(GP)シリーズの第6戦。ロシア杯の頂点に立ち、あどけない笑顔を見せたのは、今季シニアデビューしたばかりのカミラ・ワリエワ(15)だった。しかし、その点数と演技に幼さは残らない。ショートとフリー合計でトリプルアクセル2本と4回転3本を成功。自身が持つ世界記録を更新する272・71点をマークした。昨季までの世界記録は240点台であり、異次元の得点だった。
「最高の力を出せましたが、まだまだ伸びしろがあります。もっとプログラムに磨きをかけていきたいです。ロシアの観客の応援が力となって、楽しんで演技できました」(ワリエワ)
■時代を開いた「3人娘」
なぜここまで強いのか。それを語るには、ロシア女子の戦国時代を振り返ることになる。
4季前、平昌五輪でフレッシュな滑りで金メダルを手にしたのは、当時15歳のアリーナ・ザギトワ(19)。姉弟子であるエフゲニア・メドベージェワ(22)が銀だった。2019年の世界選手権(さいたま市)もザギトワとメドベージェワが金と銅。彼女らは「3回転+3回転」の連続ジャンプと演技力を武器にする戦い方だった。伊藤みどりが1989年にトリプルアクセルを成功させてから30年、女子は3回転で勝てる時代が続いていた。
時代の扉を開いたのは、19年にシニアデビューした「3人娘」だ。アンナ・シェルバコワ(17)とアレクサンドラ・トルソワ(17)は4回転を跳び、アリョーナ・コストルナヤ(18)はトリプルアクセルを武器にする。19年GPファイナルでは3人が表彰台を争い、コストルナヤが247・59点で世界記録を更新して優勝。最下位の6位となったザギトワは、17歳にして休養に入ってしまった。
特筆すべきは、この女子すべてがエテリ・トゥトベリーゼの門下生であること。ジャンプコーチ、振付師、ダンス講師、トレーナーらが集結したチームで、少女たちは英才教育を受けて育ってきた。特に、ジャンプを跳ぶ瞬間の回転のかけ方は“門外不出”で、筋力の少ない女子でも高速回転させて大技を跳ぶコツを身につけていた。