■男子なら世界3位相当
また、コストルナヤは、滑りや演技が卓越しているが、トリプルアクセルはスランプからの回復途上だ。どの選手も「トリプルアクセル」「4回転」「演技力」のいずれかを武器にしてきたなか、全知全能で、まさにトゥトベリーゼの集大成ともいえるのがワリエワなのだ。
しかもこのロシア杯で記録した272・71点は、違う視点でも偉業だった。ルール上、男女の集計法が違うため、男子の計算式にあてはめると301・14点。これはネイサン・チェン(米国)、羽生結弦に次いで世界3位に相当する。しかし、「男子と戦いたいか」という質問に、ワリエワはこう答えた。
「いいえ。男子は筋力も耐久力もあり、女子よりも4回転は簡単です。女子が4回転を跳ぶのとは違います。私は女子のカテゴリーの中で戦いたいです」
ちなみに初来日するはずだったGPファイナル(中止)に向けて、何をしたいか聞かれると、15歳らしい一面も見せていた。
「日本の有名な料理である寿司を食べたいです。あとシェルバコワたちが日本ですごく美味しいキャンディーを買ってきてくれたことがあるのですが、今回は外出できないので、町を窓から眺めるだけです」
ロシア女子選手は12月から来年1月にかけて、北京五輪の3枠をかけ激突する。
恐ろしいのは、すでにロシアのジュニア女子には、トリプルアクセル成功者が2人、4回転成功者が4人、次の五輪を待ち構えていること。少女たちは激動の時代のなか、自らを信じ、高みへと上がっていく。
(ライター・野口美恵)
※AERA 2021年12月20日号