物語はうねりをともない、今季のDeNAを鮮明に映し出し、そして来季の希望をいだかせる。辻本監督は納得した表情で言うのだ。
「これは毎回のことなのですが、僕が感動したことを、同じスケールで表現すること。もちろん、もっと掘り下げたかったというシーンがないわけでありませんが、正直それはできたと思っていますし、観ている方々にもきっと伝わると思っています。三浦監督をはじめ選手たちの変化や成長を感じ取っていただければ嬉しいですね。撮影中に大変だったことですか? いや、ないですよ。選手たちの熱にあおられて夢中で彼らを追うことができましたから」
辻本監督にとって3度目の撮影ということもあり、選手たちとの距離感はこれまで以上に密となり、より深い場所へと踏み込んでいる。DeNAのファンはもちろんのことプロ野球ファン、ひいてスポーツという世界観に興味がある人間ならば、きっと心根に響くはずだ。
また劇中には、枯れたブルースの音色が鳴り響く。アコースティックギターとスライドバーで奏でられた音楽は、哀愁を感じさせつつ胸に沁み込む。アフリカ系アメリカ人の音楽をルーツとするブルースは、時に“哀歌”と称されることがあるが、翻ってDeNAにとってブルースとは“希望の歌”である。(文・石塚隆)