DeNAの選手たちのシーズン中のリアルな表情に注目 (C)YDB
DeNAの選手たちのシーズン中のリアルな表情に注目 (C)YDB

 たしかに過去の作品とくらべ人物への迫り方が違っていた。より身近に、プロ野球選手という枠組みを超え、こぼれ落ちた“人間らしさ”が随所に伝わってくる。また映像全般に関しても、これまでの作品とはタッチが異なっており『BBB』という新シリーズであることの意義が見て取れる。とくに要所要所のゲームの描き方は意外性があり、熱量を下げることがない。決してテレビや動画では見ることのできない風景がそこには広がっていた。

 辻本監督が最下位のチームを描くのは初めてのことではあったが、どん底にいるからこそ見えたものもあったという。決してネガティブな状況や感情だけではなく、小さな灯ともいえる希望の光。辻本監督は血気盛んな若い選手と接することでインスピレーションを得たという。

「例えば今季、チームが好調であったら、いつものように活躍している選手をフィーチャリングするような作りになっていたかもしれません。しかし今季の現状を鑑みたとき、僕としては普段はスポットライトの当たらない選手たちに心を奪われることが多かったんです。注目はされていないし、結果も出ず、苦しみ、ただただもがいている。それでも顔を上げてチームのために必死に頑張っている若い選手たちの魅力を知ることで、作品の舵を迷うことなく切ることができたんです」

 今季のチームスローガンは、三浦監督が中心となり掲げた“横浜一心”であるが、その精神がチームに広く波及し浸透していく状況が映像からは感じられた。それに勝てない時期はシビアなシーンが連続するものの、チームに光が射す瞬間は確実にあった。

 辛酸を舐めた三浦監督ではあるが、過去の指揮官とは異なる選手たちとの距離の作り方は興味深いものがあり、キャプテン2年目の佐野恵太は自分とチームのことを考え気持ちが揺らぐも徐々に成長していく様子にグイグイと引き込まれる。歓喜と屈辱を繰り返した三嶋一輝と山崎康晃のふたりのクローザー。トミー・ジョン手術から復帰した田中健二朗と東克樹、そしてルーキーの牧秀悟をはじめとした若手選手たち。

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シーズン中に感じた「三浦監督や選手たちの変化や成長」