「ドミノ倒しのように、いろいろなところに影響が出ている」

 と千葉県保険医協会の吉川恵子事務局長は言う。

「自主回収が毎週のようにぽろぽろ出ている」

 と話すのは大阪府保険医協会事務局の田川研さん。

 発端となった後発薬メーカーの小林化工(福井県あわら市)では、2020年12月に薬の服用者で健康被害が発覚。特別調査委員会の報告書によると、水虫薬の製造過程で睡眠剤が混入。服用者に死者が出たほか、車の運転中に意識を失い事故を起こすなど、健康被害は二百数十人に達した。これを受け、当局は業務停止命令を発動。小林化工の生産設備や人員は、後発薬メーカー大手の沢井製薬を傘下に持つサワイグループホールディングスが22年3月末までに譲り受けることになった。

後発薬メーカー大手・日医工の本社
後発薬メーカー大手・日医工の本社

 また、後発薬メーカー大手の日医工(富山市)は21年3月、国から承認されていない製造工程だったとして業務停止命令を受けた。

 一連の不祥事は構造的な問題が背景にあり、国の施策が大きく影響している。小林化工を調査した特別調査委の報告書によると、07年ごろは国内の後発薬の数量使用比率が全体の15%程度だった。国は医療費抑制のため、安価な後発薬の使用促進に舵を切った。07年の経済財政改革の基本方針(骨太方針)では、後発薬の数量使用比率を倍増の30%以上にすると掲げた。

 直近では後発薬の数量使用比率は80%程度に達した。特別調査委の報告書は、国が2000年代半ばから、後発薬の使用割合の拡大の施策を矢継ぎ早に繰り出したと指摘。小林化工は、この動きと軌を一にして業容を拡大させ、その拡大の速度と規模は後発薬全般の使用割合の増加規模をはるかに上回るものだったとも。

「後発薬が急激に拡大するなかで、安全性より業容を拡大させた企業が出てきた」

 と話すのは日本総合研究所の成瀬道紀・副主任研究員。薄利多売となりがちな後発薬メーカーは200社ぐらいが乱立しているという。

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