■カオナシの隣に座る
今回、三つのエリアのうち最も注目されるのが巨大な「ジブリの大倉庫」だ。もともと温水プールのあった場所を丸ごと生かした空間で、天井やガラス張りの外壁はそのまま。一部2階建て、延べ床面積9600平方メートルある。
建物内に入って真っ先に目に飛び込むのが、1階と2階を結ぶカラフルにデザインされた中央階段だ。
屏風絵のような色鮮やかなタイルが敷き詰められている。タイルの数は、何と約20万枚。地元の名産・瀬戸焼でつくられ、多くがジブリパークのためにデザインされたオリジナルだという。
見上げると、「天空の城ラピュタ」の空飛ぶ巨大な船の模型が天井から吊り下げられ、プロペラを回しながら浮かんでいる。今にも空に飛び立っていきそう。
大倉庫内はいくつものブロックに間仕切りされ、期間限定の企画展が三つ行われている。その一つ、ジブリパークで“映えスポット”になるといわれるのが「ジブリのなりきり名場面展」。ジブリの13作品14の印象的なシーンが再現され、映画の中に飛び込んだ気分を味わえる体験型の展示だ。
まず、冒頭で紹介した「千と千尋の神隠し」の名場面が迎えてくれる。主人公の10歳の少女・千尋と、黒い身体にお面をつけたような顔の謎のキャラクター・カオナシが、銭婆(ぜにーば)の家に行く時に乗った海の上を走る電車のシーンだ。
記者もカオナシの隣に座った。後ろを踏切の音が流れる……。まさに映画のワンシーン。何とも不思議な気持ちになった。
他にも「紅の豚」「崖の上のポニョ」「もののけ姫」「風立ちぬ」など、数々の名場面が再現されている。
2階には、「天空の城ラピュタ」に登場するロボット兵がいた。ラピュタを守る自律式戦闘ロボットだ。高さ約4メートル。つたや苔に覆われたまま、主(あるじ)の帰りをじっと待っている。迫力もさることながら、ディテールにもこだわりが詰まっている。ロボット兵の足元には、ヒロインのシータに摘んで渡した花まであった。
近くには、「千と千尋の神隠し」に出てくる、魔女の湯婆婆(ゆばーば)が館長として執務にあたる「にせの館長室」がある。中では、実物大の湯婆婆が仕事に没頭している。
ここで働かせてください──。
千尋が震えながら湯婆婆にお願いした、あのシーンが浮かんでくる。
さらに、ジブリファンなら一度は「乗ってみたい!」と憧れる、「となりのトトロ」でお馴染み「ネコバス」の大きなぬいぐるみまであり、実際に乗ることができた。