虎ノ門・金刀比羅宮の銅鳥居右柱には朱雀と白虎の像が

五黄の寅年生まれの有名人たち

 この最強の年と呼ばれてきた五黄の寅年生まれの人は、周囲を圧倒するパワーと最強の運気を持っていて、強いリーダーシップを発揮する反面、プライドが高く信念を曲げないタイプが多いとも言われている。歴史上の人物をあげてみると、上杉謙信、徳川家康、吉田松陰など、また生年がはっきりしないまでも女性では諏訪御料人(武田信玄の側室)や高台院(豊臣秀吉の正室)がそうだったのではないかと考えられている。

毘沙門天と寅の結びつき

神楽坂・善國寺のお堂前には狛犬ならぬ狛虎が

 さて、こんな寅年の年始のお参りにふさわしい神社仏閣をご紹介しておこう。関西の方にはタイガース由縁のお寺としてよく知られている奈良の「朝護孫子寺」は、毘沙門天が日本で最初に出現した地とされ、全長6メートルもの「世界一の福寅」が参拝者を迎え入れている。毘沙門天のお遣いが寅であることから、毘沙門天が本尊のお寺と寅年は結びついているが、この朝護孫子寺の縁起に「この地で聖徳太子が毘沙門天を会得したのが寅年・寅日・寅刻だった」ことが由縁であるとされる。京都では天狗で知られる鞍馬寺、東京では、神楽坂の善國寺、虎退治で知られる加藤清正を祀る白金の覚林寺などが挙げられる。

神獣の1柱も虎由縁

 神社で言えば、東西南北を守護する四神(東の青竜・西の白虎・南の朱雀・北の玄武)を祀る神社のうち、特に都の西を守護する意味から白虎のお宮と称される。京都の松尾大社はその典型で、虎をモチーフとした授与品なども用意されている。江戸の町を風水で固めた徳川家康により東京もまた、四神を江戸城を中心に配されている。江戸城から見て寅の方角(東北東)ではなく、白虎の方角に虎ノ門が造られた理由と考えられている。ここ虎ノ門にある金刀比羅宮の銅鳥居は江戸中期に奉納されたもので柱部分に四神が刻まれている。考えてみれば四神のうち、実在する生き物は虎だけで、それほど虎は神に近い生き物ということなのだろう。

前回の五黄の寅年がバブルの始まり

 前回の五黄の寅年は、1986年でバブル経済が始まり政界ではマドンナブームが吹き荒れた。実は寅年は株式市場では「寅千里を走る」と言われながら、十二支中騰落率ワーストの記録を持つ(戦後唯一プラスになったのは86年のみ)。加えて投票率が上がることから「寅の年の選挙は荒れる」というジンクスもある。最強運の寅年と言われる2022年だが、日本の参議院選挙とアメリカ中間選挙を控え、意外に歴史は繰り返し前回の五黄の寅年のように走れるのか。それとも、五黄の寅も勝てない混迷の世界へと続くのか、期待半ばの2021年の瀬を迎えることとなる。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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