人間たちが忙しく働くオフィスで、自由気ままにくつろぐ猫。キーボードの上で丸くなる姿に、「お仕事できないよー」とトホホ顔の社員も。猫が暮らす会社は一様に、穏やかで優しい空気が流れている。ストレス社会で戦うご主人に癒やしと笑顔を届ける社猫の日常は、こんにゃ感じです。
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◆みんなのマーケット株式会社(社猫2匹、東京都渋谷区道玄坂1-10-5 渋谷プレイス10階)
清掃や引っ越しなどの出張・訪問サービスの予約ができるサイト「くらしのマーケット」を運営する企業。「猫がいる会社」と検索し、入社動機にした社員がいる。スタイリッシュなオフィスで暮らすキジトラ兄妹の名はジャンゴとシー。「Django」「C言語」というプログラミング用語に由来する。エンジニアのパソコンの上を歩き、書きかけのコードを消した前科あり。ごはんをねだるとき以外は鳴かず、「程よい距離感」が魅力の都会猫。
◆株式会社 しまや出版(社猫8匹、東京都足立区宮城2-10-12)
同人誌専門の印刷会社。「癒し課」には、社長宅で暮らすテレワーク組の2匹を含めた8匹が所属する。異色の経歴を持つのが、元迷い猫の「まよ」。昨年12月、事務所の扉の前で「入れてー」とニャーニャー鳴いていたことを機に入社した。「猫の餌代のために」と同社に発注する顧客もいて、まさに招き猫状態。社内の会議スペース兼休憩所「猫吸い処しまにゃ~」では、社員が猫に顔をうずめて「吸う」現象が頻発している。
◆株式会社qnote(社猫9匹、東京都杉並区本天沼1-1-13 ネコビル)
Webサイトのデザインなどを請け負うIT企業。昨年、「ネコビル」と名づけた自社ビルに移転した。キャットウォークを張り巡らせ、消臭・調湿効果のあるシラス壁は社員総出で塗った。「ネコ営業部員」たちは9~17歳とシニアスタッフぞろい。病院通いに投薬、点滴まで、社員が細やかにケアして健康をまもる。いっぽう、日々納期に追われる人間側も「猫がいなければ病む」そうで、持ちつ持たれつの関係。
(文/本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2021年12月31日号