谷本容疑者は仲間と自転車で居酒屋にやってきたという。
「最初は競馬の新聞を見ながら『惜しかった』『アクシデントがなければ』と和気あいあいと残念会のように語り合っていた。谷本容疑者はタニさんと呼ばれていましたね。酒が入って1時間ほど経過すると、急に谷本容疑者がブチ切れた。『騎手が悪い。それで大損したじゃないか』などと言い出した。飲み仲間がなだめて、いったんは収まった。しかし、また怒り出して、立ち上がり、椅子を手にし、『くそー』などと暴れそうになった。私も他のお客様に迷惑になるので『まあまあ』と割って入った。しばらくすると、谷本容疑者は白い錠剤を手に持っていた。たぶん、10錠くらいあったと思う。それを口に含んで、焼酎で流し込んだ。気づいた飲み仲間が『やばい、また暴れるぞ』と谷本容疑者を店の外に出し、どこかに連れて行った」(Aさん)
それから1週間ほどして、飲み仲間がAさんの店にやってきた。
「あの夜はタニさんがクスリと酒を飲んで切れてしまって手が付けられず、えらいことになったとぼやいていました。谷本容疑者がうちの店でも酒を飲んで暴れ、悪態をつくことが、2、3回あった」(同前)
記者は谷本容疑者と場外馬券売り場に一緒に行っていた飲み仲間のBさんもこう証言する。
「タニさん、ここ1、2年くらいは昼から飲んでいた。放火した心療内科に通い、『クスリを飲んでも治らない』と精神科医の文句を言っていた。こんなとんでもない犯行に及んだのは、クスリを酒で流し込んでブチ切れてしまったのではないかと思う。タニさんは気に入らないことがあると、クスリを取り出して、ビールや焼酎と一緒に飲む。当然、その後はとんでもないことになる。酒を飲まなければ、気のいいおっちゃんで、放火殺人なんて大それたことなどできるように見えない。だが、離婚後、奥さんや子供らにも見放されて、コロナで外へ飲みにも行けず、ひとりぼっちでさみしいと繰り返しこぼしていた。クスリと酒を飲むと、人格が変わってしまう」